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    エフェメラ!

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    「いつか話した気がする」くまちゃんとのふたり展タイトルより

    アルキメデスは浴槽から溢れる水を見て「ユリイカ!」と叫んだ。私たちは日々見聞きする言葉に触れては「エフェメラ!」と叫ぶともなしに記録しようと思う。言葉は儚いものであるからこそ、今このときを確実に残してくれるから。

     

     


     

    「いつか話した気がする」
    くまちゃんとのふたり展タイトルより

     


     

     

    ポッドキャストユニット「イシュミナ」のメンバー・くまちゃんと11月に開催する展示のため、スペースの内覧に行ってきた。ポッドキャスト内ではさんざん話しているが、開催場所は「森山邸」。わたしは建築の世界に疎いのだが、青森の「十和田市現代美術館」や香川県の「豊島美術館」で知られる建築家・西沢立衛さんが設計し、2005年10月に竣工した戸建て住宅である。わたしはこの建物、というか森山邸をめぐる風景、生活まるごとの佇まいに心を射抜かれてしまった。森山邸で印象的なのは、白いキューブ状の建物の連なり。10個のキューブがポコポコと独立して存在している。そのひとつひとつは間取りも大きさも階数までも異なる。中にはお風呂だけのキューブもある!A棟からJ棟まで10個のキューブがある中、今回展示で使わせてもらうのは「A棟(えいとう)」。オーナーの森山さんが実際に暮らしている場所である。

     

    写真は2階部分。ずらりと並んだ本棚の本がすべてひっくり返っている。森山さんいわく、「背表紙がうるさくなってきた」のだそう。情報が適度にそがれていることが、この空間の居心地の良さにつながっているのかもしれない。しかも、この本棚は可動式。仕切りがわりにもなっていて、場所を変えると雰囲気がぐっと変わる。今回で森山邸を訪れるのは3回めだが、毎回違って見える!

     

    そしてここが3階。階段を上がると空につながる窓。わたしたちが行ったときは大きく開け放たれており、ふわりとまいこんでくる風が気持ちよかった。思わず、うわ〜と声が漏れる。

     

    今回のふたり展のタイトルは「いつか話した気がする」に決まった。わたしたちの出発点であるポッドキャストから想起したテーマでもある。

    「いつか話した気がする」
    それは、記憶の中にあるような、でもどこか夢のような既視感。
    まだ言葉になっていない、でも確かにあった感情や、すれちがいと共鳴のあいだに浮かぶ小さな気配。

     

    森山さんが暮らしている空気が感じられるこの空間でくまちゃんとわたしの作ったものがどう組み込まれていくのか。今はそれが楽しみで毎日少しずつ手を動かして試行錯誤している。三十年商店のみなさんにも見てもらえると嬉しい!

     

    (056)

     

     

    エフェメラ/「一日だけの、短命な」を意味するギリシャ語「ephemera」。転じて、チラシやポスターなど一時的な情報伝達のために作成される紙ものなどを指す。短命だからこそ、時代を映すとされ、収集の対象になっている。

    書き手

    ほしばあさみ

    ほしばあさみ

    東京都国立市/42歳

    ©30YEARS ARCADE