悔し涙
中学生野球部の夏が終わった。 序盤は頑張って接戦だったが、後半地力の差が出て得点を重ねられ、残念ながらコールド負け。相手...

風早草子
カザハヤソウシ
2025年11月5日
連休明け、中学生は今日から正念場の試験だし、仕事も色々あるし、家や近所のことも忙しいのだけど、日々、どうでもいいことをあれや、これや思索することは止められない。

最近、振り返って見返し始めてしまったいしいひさいち。そして気付いてしまった。これは現代の鳥獣戯画だ!(個人の感想です)
鳥獣戯画が好きだ。絵がうまくて手先が器用な父が年賀状の木版画のモチーフによく使っていたので、子どもの頃から馴染みがあった。それはさておき、単純に絵が上手い。描いた人間は天才だろう。キャラの造形は見事としか言いようがない。あ、ちなみに高山寺に伝わる鳥獣戯画は、甲乙丙丁の四巻があるけど、最も有名なウサギやカエルの甲巻の話です。乙丙丁は、まあどうでもいいかな。たぶん描いた人もそれぞれ違いそうだし、別に一貫性もなさそうだし。まあとにかく、甲巻限定だけど鳥獣戯画が好き。芸術や美術への関心が低くて、しかも人が多いのが苦手な私は美術館とかに行く慣習がほとんどないのだけど、鳥獣戯画展は昔、ミッドタウンであった時に行列に並んで見に行った。これ以外行列して絵画の鑑賞に行ったのは若冲しかないかな。
その鳥獣戯画、さまざまな専門家に研究しつくされているのだけど、結局よくわかっていないシロモノだ。描いた人も分からんし、描かれた時代もはっきりしない。そもそも世に出てきたのは、描かれてからかなり時代が下ってからのようだ。どういう目的で何を描いたのかも分からない。平安時代の絵巻物いうのは、案外突飛な物語があるようだけど、基本的には説明の文字が書き込まれているものが多いのだけど、鳥獣戯画は絵しかない。ということで、どういう解釈をしても憶測にしかならない。日本の漫画の原点、始祖だ、みたいなことを主張した人もいる。一方で研究者は、そう断定できる根拠はないし、風刺的な意味とは限らない、とかあーだこーだ言っている。展覧会で売られる解説本とか読んでも、結局、こーも考えられるし、あーいう可能性もある、みたいな感じ。平安末期のよろず黒幕でよろず音芸プロデューサーだった後白河上皇の息がかかっているとか、安徳天皇を亡くした徳子を慰めるために作られた作品群の一つ、みたいな解釈もあった。さすがに想像を膨らませすぎでは?と思うけど。
なので、現在の人間は、残された絵を見て自由に考えればいいと思う。ハッキリしているのは、動物のキャラ化が抜群に上手いということ。ウサギにしてもカエルにしても、造形のデザインは現実の姿からほとんどいじっていない。カエルのままだ。でも、そのカエルが人のような振る舞いをする姿がとても自然。弓や相撲に興じる姿がとてもイキイキしている。




完全に動物としてのウサギやカエルではなく、別のキャラ化されている。その感じがふと、いしいひさいち漫画と似ているな!と思った次第。彼の漫画はタブチ、ヤスダ、ヒロオカという、元はプロ野球選手と監督だったキャラクターが、いつのまにか、体育教師、売れない推理作家、編集者、偏屈な老医師などに使いまわされていく。その幅は果てしなく広くて、作家の宮部みゆきさんから読売新聞の社主まで、キャラ化して、暴走させている。いしいひさいち氏にとっては、彼らもカエルやウサギのようなものなのではないだろうか?(笑)





鳥獣戯画が風刺の意味で描かれたものかは明らかではない、というのが専門家の解釈みたいだけど、カエルのご本尊に向かってお経を読む猿、そして法会の後に大量の供物を受け取る法衣を着た猿の顔がものすごく俗物っぽく描かれていることを見ると、風刺の意味が込めれれていると考える方が自然だ。おそらく描かれた当時なら、それがどんな人たちを表していたかは、わかったのではないだろうか?だから「これって天才だけど、表には出せんよね?」と長年、好事家に秘蔵されていたのではないだろうか?(独自研究です)

ちなみにいしいひさいち氏は、取材を受けないことで有名な漫画家で、顔写真もほとんど流布していない。作品がジブリで映画化される時の条件に発表会などに出ないこともあったらしい。顔を出さない理由は、多くの人に恨みを買っているから、というのは冗談かもしれないけど、本音もあるかもしれない。まあ時代が時代なら打首かも、という漫画も多々あることは確か。(笑)
以上、本日はどうでもいい雑談を書いてしまいました。子供達も受験生だし、こういうどうでもいい話をする相手がいないのが、小さい悩みかも。今日は山本由伸の「言ってない名言」、Losing isn’t an option を山本由伸本人がセレモニーで英語で話した、という話も面白かったんだけど。「ロストイントランスレーション」の逆、「ボーンイントランスレーション」?みたいな話だ。構造が全く違う英語と日本語は、訳すときに色々ある。私も国際ニュースの翻訳テロップは山ほど書いてきたので、色々思うところはあり、このニュースも面白いな、と色々考えたのだけど、まあ本日の雑談日記は鳥獣戯画にしました。(笑)
付け足しのおまけ。
鳥獣戯画が描かれたのが平安末期だとしたら、弓とか相撲で騒いでいるのは、当時、御所とかに奉公し始めていた武士だったりするのかな?田舎者で知恵は浅いけど、乱暴で騒がしくて都で幅を利かせ始めた武士?泥臭い田舎者がカエルで東国から来た源氏?小賢しいウサギが西国から来た平氏?とか、勝手に想像するのは楽しい。

神奈川県葉山町/58歳