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    風早草子

    風早草子
    カザハヤソウシ

    揺らぐ写真の「真正性」に悩む

    骨折して自転車に乗れない双子1号を中学まで車で送る。山の上の中学校はうちから3キロくらいあるため、歩いて行くのはさすがに大変。だから自転車通学が認められているのだけど、自転車に乗れない状況になると、どう行く?という問題が浮上する。で、また帰り。一応通学用に京急がバスを走らせているのだけど、今週は3年生だけ三者面談で給食を食べてすぐに下校。その時間にバスの便がないため、迎えも必要。本日は妻が朝から仕事でフル稼働なので私が対応すべく、今日も在宅勤務。まあ中学まで車で10分もかからないので、大した手間ではない。ただ左手首を折り、右手も手のひらと肘を大きく擦りむいていて、風呂は大変。昨日は入らなかったが、今日は入浴させるも、頭髪を自分で洗うのは難しい。ということで、中3男子の頭をトーさんがシャンプー。幼稚園児の頃まではみんなトーさんと一緒に風呂に入って頭も洗ってやっていたが、さすがに久しぶりだ。双子1号君は小2の時にも腕を骨折しており、トーさんに頭を洗ってもらうのはそれ以来だと思う、と言っていた。

    ところで仕事の方では、大きな懸念が浮上している。写真の「真正性」という問題だ。最近のAIの急激な性能の向上で、現実問題として、もはや判別不可能な「写真のような画像」が溢れている。3年前、スターブルディヒュージョンというAI画像生成アプリが一般向けにWeb上でリリースされた時、私はすぐにいじり倒してみた。当時、水害の被災地だとするフェイク画像がSNSで拡散して問題になったりし始めた頃だった。ただ、まだ生成の呪文であるコマンドは英語で入れなければならなかった。色々試すと、水害被災地のフェイク画像などは私でもかなりリアルなものを作ることはできた。でも、動物や生き物はまだかなり残念なレベルだった印象。もちろん、当時でももっと精密なコマンドを打ち込めば、さらに精度の高い画像は作れたかもしれない。また元画像を使った改変までは試さなかった。

    でもその後、さまざまなAI画像アプリがリリースされて、スマホの広告にやたら出てくる世の中になったことはみなさんご存知の通り。ただ私はSNSでバズりたいとか、人からの承認欲求も特になく、画像をAIで修正する動機もないので、自分で触ってはこなかった。しかし最近、子どもの写真の背景を、散らかった自宅ではなくタワマンにした画像がSNSなどに目立って増えており、しかもそのクオリティが高い。あからさまだったり、わざとらしい改変でなければ、もう気付けないレベルだと思う。ちなみに我が家の昔の子どもの写真をGeminiでタワマン化したのがこちら。

    Screenshot

    Screenshot

    日本語の「呪文」を入力して数十秒でAIが回答画像を出してくる。怖いのは、背景だけでなく「リア充感を強く」とかコマンドを入れると、子どもたちの姿勢が良くなり、よそ見してた子がカメラ目線に変わったり、人間にも簡単に改変をしてくるところ。これを一瞬でやってしまうんだ、という感じ。双子の表情はオリジナルの方が可愛いと思うけどね。

    ただこれはもう「写真」ではない。「真を写す」から写真なのであって、AIが勝手に生成した画像はすでに写真ではないはずだ。でももう識別はできそうにない。実はここではあえて画像は載せないけど、私が自分の仏頂面を自撮りした画像を一枚、Geminiに読み込ませただけで、それを元に、にこやかだったり、頼もしげだったりするさまざまな表情の、選挙ポスターや証明写真みたいな画像をAIは作ってしまう。ああ、私はこういう表情もするかな?というさまざまなバリエーションを自由自在だ。これまでならカメラマンにさまざまなポーズや表情で何テイクも撮影してもらっていたのが、元画像一枚でAI のコマンドを変えることでそれができてしまうことになる。

    私の業務には、顔写真の提出を受けて、その画像を元に画面を作るというフローがある。顔写真は先方の責任で撮影、提出してもらうことになっているが、今後、AI生成画像を出してくるケースは必ず出てくるだろう。しかし、それは「写真」ではなかろう?でも、こちらでもはや判別もできない・・・これまでだって、写真は肌を綺麗に補正するとか、プリクラならデカ目とか色々あった。ただあくまで補正、修正であり、オリジナルがありき、という原則だった。真を写した写真に基本的に「真正性」というものがあるゆえに、写真は、「証明写真」として用いられてきたわけだ。でもAIが全く違う表情とかポーズを作り出してしまうと、それは完全に揺らいでしまう。

    さてどういう考えでどういう対応をして行くべきか?それにしても大変な時代になったものだ。シンギュラリティとか、色々言われたり意見もあるが、少なくともいくつかの分野で現在は、臨界点みたいなものを超えていると感じられる。

    書き手

    海秋紗

    海秋紗

    神奈川県葉山町/58歳

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