モヤっとしてるって時に
普段の掃除はパパッと掃除機で済ませるのだ...
風早草子
カザハヤソウシ
2025年3月27日
日記が野球の話ばかりでどうかと思いますが・・・仕事休む決断して小田原まで駆けつけた次男チームの試合。想像を超える困難で手に汗握る展開、そして、それに果敢に立ち向かい、乗り越えた選手たちの奮闘、団結、成長、ついにこじ開けた県大会出場、その歓喜の瞬間。とても感動していて、詳しく書かずにはいられない。(笑)
春の高校野球神奈川県大会。甲子園にはつながらないローカル大会だけど、夏に向けチーム力を上げる実践の機会として重要だ。球場での公式戦だし、勝つことでチームの自信も尽くし、試合を重ねれば、夏への課題も明確になりモチベーションも高まる。
いきなり一発トーナメントの夏大会と違って、秋大会、春大会は、まず4校、もしくは3校のブロック予選というものを戦って、上位チームがトーナメントに進出できるシステム。一発トーナメントだと、初戦敗退のチームは一試合しかできないので、そういう配慮もあるのかもしれない。ブロック総当たりなので、4校ブロックなら三試合が戦える。
ただ問題は、4校中上位2チームというその勝ち抜きシステムだ。実は4校総当たりというのは、2勝1敗のチームが3つ、3敗のチームが1つ、みたいな状況がよく起きる。そして勝敗が並んだ場合の優劣は、得失点差で決める。サッカー方式だ。ただ、サッカーと違って野球は大量得点が入りやすい上にまた、コールドゲームという規程があるため、さらに話がややこしくなる。感覚的には、野球の場合、得失点で優劣を決めるシステムはあまり合ってない気がするのだけど、そうなっている以上、各チームはそのレギュレーションの中で、予選突破を目指すほかない。これがまず今日のドラマの前提である。
強豪私立を打ち破りここまで1勝1敗の次男チーム、私立には後半追い上げられ2点差勝利、そして初戦の県立対決は1対7で敗れたため、得失点差はマイナス4、とかなり劣勢な状況。今日の第一試合、2勝の県立と私立の対戦の結果がとても重要だ。県立が勝てば、県立3勝、私立1勝2敗となり、第二試合で次男のチームは勝ちさえすれば、2勝で2位確定、予選突破だ。しかし、私立が勝つと、次男のチームが勝った場合、3校が2勝1敗で並び、得失点差で順位が決まる。その得失点差、2勝の県立はプラス10、初戦14対0で大勝している私立はプラス12。マイナス4の次男チームはとても厳しい。
保護者の何人かは、一試合目から球場に行っている。「全力で県立を応援します」と最初はLINEにメッセージが来ていた。もちろん県立が勝って3勝してくれるのがベストだ。小田原に向かって車を走らせる中で試合経過を気にしながら考える。ただ、シニア出身部員50人を擁し、県ベスト16の私立が、県立相手に二戦続けて不覚を取ることはないのではないか?きっと日曜日に次男チームに敗れたあと、相当監督から喝を入れられているだろう。果たして、LINEには私立が序盤で6対0でリードと来る。私立が勝つならば?、そう、なるべく大差で勝って、県立の得失点差を削ってくれた方がいい。理想は14点差の勝利。そうなれば、次男のチームと並び、次男チームがただ勝てば、相手を得失点差でも上回れる。そういうわけで、第一試合を先乗りして見ている保護者も「頑張れ県立!」から、「大差で勝て私立!」に立場が変わっている。ただ高校野球の予選にはコールド規程というものがあって、実は14点差の試合というのは生まれにくい。コールド規程は5回終了時に10点差以上、7回終了時に7点差以上が付いたら、そこで試合は終了となってしまうのだ。つまり10点差以上の得失点差は、5回までに大量点を取るか、5回以降なら先攻のチームが表の攻撃で大量点を取らないと成立しない。後攻のチームがリードしている場合、5回裏に10点差目が入った時点で、サヨナラ扱いで試合は終了になる。大変ややこしいが、これも今日のドラマのカギとなる。
一試合目、私立が大勝か、と思っていたら、県立が反撃し、6対5に猛追。こうなると我々としては、頑張れ県立、逆転して勝て!となる。だが、そのあと私立が突き放して、どうやら勝ちそうな展開。それならもっと突き放してくれ!なのだけど、8回裏まで終わってスコアは10対5。ううーーん、そうなると、県立の得失点差は5点減り、5、マイナス4のコチラとの差は9となる。つまり次の試合、相手に10点差をつけて勝てば逆転。目指せ、10点コールドなる。
ところが。勝利目前、私立がエラーで県立に一点を献上してしまう。スコアは10対6で終了。となると、県立との得失点差は10。10点コールドで勝っても同点。その場合、直接対決で勝っている方が上位とされるシステムなので相手が予選突破、コチラは敗退となる。つまり、次の試合、相手に11点差以上を付けて勝つことがブロック予選突破の条件となったわけだ。10点でなく、11点になった差は大きい。そうコールド規程があるため、10点差が付いたら試合が終わってしまうためだ。後攻の場合、5回以降は10点差がついた瞬間に試合が終わってしまうため、11点目はホームラン以外では取ることが不可能になる。そう考えると、まず先攻が取れることがとても重要だ。
選手も保護者も数字計算で頭がいっぱいな中でついに試合が始まる。
まずキャプテンがじゃんけんで勝って先攻を取れた!超重要だ。
でもだからと言って話は全く簡単ではない。まず相手も強いのである。ここまで2敗、私立には大敗しているとはいえ、県立対決では、終盤までこのチームがリードしていた。夏も4回戦とかまでよく進出している県立の中では、むしろ格上の実力校と言っていい。ただこちらも日曜日の試合で私立から12点を奪い、打線が絶好調。その攻撃力で大量得点を狙うしかない。
しかし、10点差コールド、7点差コールドで試合を終わらせずに11点差をつけて勝つ、というのは、前提としてミッションインポシブルとしか言いようがない。そもそも相手だって予選突破の可能性は無くなっているが、夏に向けて貴重な球場での実戦であり、手を抜く意味も理由もない。むしろ必死な相手に打ち勝つことが次につながると思っているはずだ。
コールドにならずに11点差以上で勝つには、4回までに11点以上取って相手を0点に抑えるのが一番シンプルだ。もちろん選手たちはわかっている。
だが得てしてそう簡単にはいかない。一回表、好調、2番キャプテンがヒットで出塁して相手のボークで二塁に進むが、続く次男は、当たりは良かったものの外野手正面のライナーでアウト。続く4番が三振で初回無得点。
それどころか1回裏に相手に2本のヒットを打たれて1点のリードを許してしまう。2回表もランナーを二人出したものの相手外野のファインプレーが出て無得点。11点差どころか、負けるんじゃないか?みたいな予感まで漂ってきた。
しかし、選手たちは逞しかった。3回、エラーから2塁に進んだランナーをまず次男がタイムリーで返して一点、そして犠飛で生還して逆転して1点リード。そこから打線が目を覚まして、次の回は9番が死球で出塁のあと、主軸の1、2、3番が連続ヒットを放つなど一気に4点を奪った。6対1。11点様であと5点だ。
5回に一気に決める気満々で攻める選手たち。1アウト満塁という絶好期が3番の次男に回ってきた。しかし、ここは会心のあたりがサード正面でまさかのダブルプレーで無得点。ついに試合はコールド成立がある5回を超えてしまった。
このあとチームは6回表にも集中打で4点を加えて10対1。点差は9点で、まだ「5回以降10点差コールド」にはならない。だが7回以降は7点差でコールド成立、試合終了になる。つまり7回表にあと2点加えて12対1にして、裏の攻撃を抑えれば、予選突破となる。7回表の先頭打者は次男。ヒットで出塁し、すかさず果敢に盗塁セーフ。2点が必要な局面、送りバントは使えないし、ランナー1塁だとゲッツーのリスクもある。もはや攻めるしかない場面だ。次の打者の内野ゴロで3塁まで進み、一死3塁。あと2点がこの回に必要だ。だが次のバッターは外野フライ。まず一点ということで次男がタッチアップしてホームイン。ツーアウトから、あと一点を取れるか?という場面。
と思っていたら、なぜかアウトの判定。相手チームがタッチアップの離塁が早かった、とアピール、それを審判が認めてアウトの判定でチェンジということ。試合慣れしている次男はそういうミスをするタイプではないし、そもそもプレーを見ていて離塁が早くも見えなかった。ただリプレー検証もない高校野球の試合、このタッチアップのアピールプレーは、しばしば不可解な判定が出がちで、実は長男の時もこれにやられ、試合に負けたことがある。相手はまさかの今日の対戦校だった。因縁というやつか?
スコアボードの11が10に戻されて、10対1で7回裏の相手の攻撃。このまま抑えると、7回7点差のコールド規程が発動して試合が終わってしまう。保護者席は皆あっけに取られた表情で「これで終わりか」となってしまった。私も1988年10.19の近鉄を思い出していた。優勝のために勝利が必須な状況で同点で時間切れになり、10回裏、近鉄の選手たちが守りにつかなければならなかった、あの試合である。当時、私はテレビで見ていて鮮明に覚えている。
しかしこの試合は、これで終わりではなく、選手たちは諦めてもいなかった。
予期せぬ形で攻撃が終わって始まった7回裏の守備。ヒットとエラーでランナーが出たあと、マウンドに選手が集まって長く話をしている。そしてそこから前代未聞の作戦が始まった。キャプテンのエースがストライクを投げなくなり、連続フォアボール。押し出しで相手に得点が入っていく。コールド規程は7回以降7点差が開くとそのイニングで試合が終わる。だが点差が6点なら次のイニングに進む。10対1で9点差のところ、相手に3点を与えて試合を続ける作戦だ。敬遠のフォアボールというのはよくあるが、故意押し出しで相手に得点を与える、という試合は見たことがない。しかし、この試合が県大会出場をかけたブロック予選として行われている以上、この試合でただ勝っても、予選突破できなければ「負け」だ。最終順位が得失点差で決まるルールになっている以上、チームの判断として間違っていない。
本当に3つの押し出しを与えて、試合は10対4で8回表に進んだ。表の攻撃で一気に5点以上を取って裏を守れば、11点差以上で勝つことが理屈では可能だ。でも相手チームにそんなことは関係ない。普通に全力で抑えに来るだけだ。8回表の攻撃はヒット2本を放ったが、ホームを狙ったランナーが刺されて無得点でチェンジ。そう、野球は一点を取るのだって簡単ではない競技なのだ。
8回裏、相手チームにヒットを打たれながら、無失点で切り抜けて依然10対4。
いよいよ最後、9回表の攻撃。打順は一番期待ができる1番からだ。選手たちもここが最後のチャンスだとわかっている。表情から見て取れる集中っぷりがすごい。
そしてここからミラクルが始まった。
先頭ショートの選手、キャプテン、次男と3連続安打でまず一点。それに4、5番の1年生が続き5連続安打。野球というのは、会心の当たりでも野手の正面へ行けばアウトになるもので、5連続ヒットというのは、滅多に出るものではない。それがこの場面で出るなんて、君たちは?
5番の一年生が塁上で叫んでいる。そういう気持ちだろう。いまこのチームにどういう力が働いているのだろう?見ていて不思議な気持ちになる。
そのあと下位打線も粘ってつなぎ、本当にこの回、5点が入った。奇跡的だ。
裏の相手の攻撃があるため、リードは大きいに越したことはない。しかし、相手もそれ以上の得点は許さず、15対4のスコアで9回裏、最後の守りへ。
野球というのは怖いスポーツで、不運なあたりとか、思わぬミスで点を取られることが珍しくない。予選突破条件ジャストの11点差、一点でも相手に奪われれば、ドーハの悲劇、10.19の近鉄みたいなことにもなり得る。全く油断できないし見ている方はドキドキだ。
果たして、一死からの打球、ピッチャーのグラブに当たって方向が変わり、後方に弱く転がる。こういうのが嫌なのだ、と思ったら、猛ダッシュしてきたショートが素早い送球。この回ファーストに入った次男のミットに入りアウト。この日一番のファインプレーがここで出るなんて。
いよいよツーアウト。最後の打者の強い打球はエースの溝落ちを直撃して前に転がる。が、エースが気丈にそれを拾って1塁へ送球。次男がガッチリウィングボールを受け止めて試合終了だ!
ブラボー!何というか選手たちだろう!
今日は、さすがに得失点差が11となった時点で、予選突破の可能性は限りなく低くなった、と思って試合を見始めた。それが終わってみれば、見事ミッションインポシブルをクリアして予選突破、県大会進出だ。おめでとう!
すごいものを見せてもらった。強くなった。県大会も頑張れ!
仕事休んで球場に行った甲斐が十分すぎるほどあった。(笑)
腹に当たったボールをファーストに投げて、9回、最後のバッターをアウトにしたエースでキャプテン。ウィングボールを持った次男が駆け寄るが、しばらく痛みで立ち上がれなかった。後で着替え中の写真が送られてきたのを見たら、腹に真っ赤なアザができていた。まさに激闘。
神奈川県葉山町/57歳