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    王様の耳は

    王様の耳は
    オオサマノミミハ

    見えなくなること

    図書館から予約していた本が確保できたとのメール。ずいぶん前に予約していたのですっかり忘れていた。

    知人の石井くん(通称いしいし)が書いた本。(知人の本なのに図書館で借りてしまって申し訳ない!)

    石井くんは10年程前、突然に視力を失ってしまった。直接会うのは年に2,3回程度だったけど、Facebookで近況は見ていたので、その時のことはかなり衝撃的だった。

     

    読んだ感想は「あー、いしいしっぽいなー」。

    石井くんは同い年で、私の中ではシュッとしてて、おしゃれでインテリで、理屈っぽくて繊細なイメージ。文章もそんな感じだった。エッセイだけど、村上春樹の「僕」が出てくる小説みたいに感じた。自分をものすごく客観視できないと、こんな風には書けないと思う。

     

    もし自分が、突然視力を失ったら。

    子供の頃からかなりのド近眼だけど(今メガネは-8.00)色や光のない世界とは比べものにならないだろう。

    無限に広がる暗闇。恐怖しかない。

    以前、石井くんが車椅子用トイレの中で遭難しかけパニックになった話を投稿していた。右も左もわからない暗闇では、あの空間でさえ無限に感じてしまうだろう。

    実家で飼っていたチワワは晩年、白内障と認知症?で大変だった。基本部屋で放し飼いだったけど、目が見えないのでどうしていいか分からず、恐怖なのか日夜問わずウロウロしながらずっと吠えていた。そのせいで、父が何日も眠れず体調を崩したので、せめて夜だけでもケージに入れるようにすすめてみた。

    闇が無限に広がる恐怖より、身体が壁にぶつかる空間のほうが安心すると思ったのだ。おかげで夜泣きはしなくなった。犬を引き合いに出すのは申し訳ないけど、石井くんの投稿を読んで思いついたことだ。

     

    そんな石井くんは狭い空間にとどまることなく、勇気を持って白い杖と共に世界に飛び出して行った。不安と恐怖しかない無限の暗闇を、果てしなく広がる可能性にして。今彼はヘラルボニーに勤めたり、お笑いもやってるはず。勇敢!

    書き手

    ふかやまゆみこ

    ふかやまゆみこ

    東京都町田市/46歳

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