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    月曜の訃報

    月曜、訃報に接す。

    何度かお会いした程度で特別親しかった訳では無いが、広義で同業者。しかし私などが同業と言うのも憚られるほど多彩な才能の持ち主で数々の素晴らしい仕事を残した。私がこの目で見たことのある彼の仕事は虎ノ門ヒルズの橋くらいか。写真はその橋の上にあるキャノピー。彼の名作のひとつである三角港のキャノピーに似た構造だが実質はかなり違う。これだけを見ても構造エンジニア特有の形状とそこに作用する力の理解に加え、それをデザインに昇華させる稀有な才能だった。

    おそらく最も有名なのは長崎の出島表門橋であろう。世界的にも稀な構造を考え出し、地元の企業とともに作り上げ、架橋までのプロセスをお祭り化して市民と共有するというものすごいことを成し遂げている。この構造はかなりすごい。出島側は「掘ればなにか出る」歴史地区であり、つまり掘れない。元の橋を再現しようにもその当時の川幅より6倍ほどの30mになっている。これらを出島対岸側でアンカーし、テコの原理というシンプルなアイディアを高度にまとめあげ、出島側にはほぼ負担をかけない、限りなく片持に近い構造を実現している。さらに補足すると、通常はこの様に1点しか支点が設けられないような場合には斜張橋のような形態を取るのがセオリーであるが、出島の景観を邪魔しないという意志のもと、上部に突出しない形状としてこの難解な構造を選択している。思いついた瞬間にはワクワクするが次の瞬間には「本当に出来るか?」という自問自答のプレッシャーに苛まされることは容易に想像できる。

    エンジニアリングとデザイン、さらにはまちづくりまで軽やかに横断しまとめ上げる。そんな才能は少なくとも私の生きている間にはもう出てこないかも知れない。

    御冥福をお祈りします。

     

    書き手

    田畠隆志

    田畠隆志

    神奈川県横浜市/48歳

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