お便りフォーム

    お名前(ニックネーム)*

    Eメール*

    宛先*

    メッセージ*

    風早草子

    風早草子
    カザハヤソウシ

    メジナの刺身

    やっと土曜日。中学生は朝早くからおにぎり持って野球部の練習へ。1年生はマネージャー1名含む6人も入ったそうな。これで3年生が抜けても単独チームが組める。1学年3クラスしかない小さい中学なので6人というのは結構多いのだ。そして今年の1年生は皆、小学校でも野球をやっていた経験者らしい。先輩たち、ポジションを取られないかな?

    中学生を送り出してからランニング。オオムラサキツツジが満開の季節になり、走っているとあちこちでその甘い香りを感じる。今日は浄楽寺の前にスーツを着た誘導係がたくさん立っていた。何のイベントかと思ったら、前島密の墓前祭というのがあるらしい。浄楽寺は私にとっては、親父さんから安い魚を買う朝市が出る寺、という場所なのだけど、実は、鎌倉殿の十三人にも出てきた和田義盛ゆかりの由緒ある寺で、運慶の仏像を所蔵していたりする。そして、なぜか日本の郵便の父とも言われる前島密の墓がある。調べると彼の命日は4月27日となっている。それで墓前祭があるみたいだ。特定郵便局の局長が集合するイベントっぽい。それは何だか政治色が濃そうだけど。(笑)ちなみにここにはこんなポストがある。ちゃんと手紙を投函できる。

    それはともかく、やはり私にとっては魚を買う寺で、今日も夕食は任されているので魚を物色。春になって魚屋は品揃えが豊富だ。親父さんにはマグロとイナダを薦められる。マグロは本マグロの幼魚のいわゆるメジだ。もちろんまずくはないのだけど、身が柔らかくて脂もなくさっぱりした味で、そこまで魅力は感じないのでパス。そしてイナダよりも今日はヒラマサが1匹入っていたのでこちらを選ぶ。このあたり、カンパチは時々並ぶが、ヒラマサはかなりレア。しかも一本1000円の格安。そしてメジナ。かなりの大物が5〜600円。冬場が旬とされるからか、寒い時期は1匹2000円くらいで売られているのだけど、なぜかこの時期になると投げ売りになる。アンコウと同じ現象。昔から夏場は磯臭くなる、と言われている魚だけど、少なくともこの時期に食べてそんなことは思ったことはない。この大きさで600円なら文句なしで買いだ。

    メジナは釣り人にとっては全国的にお馴染みの魚だけど、関東ではスーパーなどにはまず並ばない。なぜだろう?私が初めて食べたのは、長崎の五島だった。30年ほど前、五島列島で蜜蜂を越冬させる北海道の養蜂家のドキュメンタリーを制作していて、札幌から何度も五島まで取材とロケに行った。魚は何を食べても超絶な美味しさだったけど、特に印象に残っているのが、メジナだった。あちらではクロと呼んでいたかもしれない。養蜂家の方は、島の元庄屋さん?的な家の立派なお屋敷の納屋を借りて生活していて、そこを取材、撮影したりしていたのだが、終わるとお屋敷の上品な奥さんが「終わりましたか?」と呼びにこられて、母屋でご接待を受けてしまったりしていた。座敷には豪華なお刺身がたっぷりと並べられていて、もう恐縮の限りである。取材は養蜂家のトラックに同乗して、一日中、巣箱が置かれた島のあちこちを走り回り、蜂に何度も刺されるし、まだ若くて経験が浅い未熟なディレクターだった私にとってハードなものだったのだけど、五島というと、美しい景色と美味しい魚の味、そしてそこで出会った様々な思い出が蘇って来る。最近、五島在住のひらのあすみさんがこの日記の書き手に加わったのも、何かの縁かな?と思いながら毎日読んでいる。いつかまた福江島に行きたいものだ。ホテルの近くにあった餃子がおいしい中華屋さんとか、まだあるだろうか?

    夕食は刺身たっぷりで、中高生に米をたくさん食べさせる感じ。メジナは皮を残した松川造り。予想通り絶品。個人的にはメジナには九州の甘い醤油が合うと思っている。

    書き手

    海秋紗

    海秋紗

    神奈川県葉山町/57歳

    ©30YEARS ARCADE