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    風早草子

    風早草子
    カザハヤソウシ

    母との時間

    庭のユリが咲き始めた。カインズホームで買ってきた球根ミックスが元なので仕方ないのだが、なかなか変わった色。毎年、この色が最初に咲く。このあと、もう少し普通の色の花が咲く。

    本日は母の通院付き添いで車で東京へ。さすがにもう休んでいるのは厳しいのだけど、兄も用事がある。「次」に向けた調整、準備もあり、色々神経を使う。病院では医師から記憶力のテストみたいなのを受けていた。いわゆる長谷川式というメソッドの認知症テストらしい。数字の引き算みたいなのは答えられていたが、今日が何年何月何日か?というのは出てこなかった。医師が言ったいくつかの単語をおうむ返しで回答するのはある程度できた。ただ最後に野菜の名前を10個あげてください、と言われてキャベツ、玉ねぎ、白菜・・・で止まってしまい、それ以上野菜の名前が出てこなかった。あとで医師から検査の結果は「重度」と言われた。病院のあとは処方箋を持って薬局へ。種類が多いので結構待つ。その間に診察結果などを兄たちとのグループLINEにせっせと書いて共有する。

    昼食は母の食事の好みが自身でもわからなくなっているので最近はだいたい寿司だ。だが、もう自分で好きなネタとか選ぶことができないので、私が数種類選んで並べる。最初に一通り自分で醤油をかけるのだが、それを忘れて食べるたびに新たに醤油をかけようとする。放っておくと醤油浸しになってしまうので、注意する。まあ客観的に見て限界なのだ。

    寿司屋の近くが父の墓がある寺なので、ついでにだいたい墓参り。父の墓の近くに生えていたエノキの木が切られていた。根が伸びて墓石を押し上げてしまったためだそうだ。でも一応無事に墓参りを済ます。そういう母の様子を見ながら、兄とその奥さんと今後に向けたやりとりをLINEでかなりやりとり。これはなかなか重労働で疲れるが、仕方ない。

    とりあえず母を家に戻して、訪看さんにあとは任せることにして引き上げ。帰りの運転中に業務スマホは鳴るし、家に帰るとteamsには大量のメンション。それも仕方ない。片付ける前に1時間ほど走って汗を出す。色々溜まる悪いものは汗と一緒に出すのが一番だと思っている。

    書き手

    海秋紗

    海秋紗

    神奈川県葉山町/57歳

    ©30YEARS ARCADE