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    エフェメラ!

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    エフェメラ!

    「ビーフシチューを好んだ吉田だが、「会話に夢中になると、ナイフとフォークで食べるのが面倒だ。話しながらでも、手づかみで食べられないものか」と、先代マスター(故・鈴木一郎さん)に相談し、それに応えて誕生したのが「ビーフパイ」だったのだ。」『ランチョン』ホームページ

    アルキメデスは浴槽から溢れる水を見て「ユリイカ!」と叫んだ。私たちは日々見聞きする言葉に触れては「エフェメラ!」と叫ぶともなしに記録しようと思う。言葉は儚いものであるからこそ、今このときを確実に残してくれるから。

     

     


     

    「ビーフシチューを好んだ吉田だが、「会話に夢中になると、ナイフとフォークで食べるのが面倒だ。話しながらでも、手づかみで食べられないものか」と、先代マスター(故・鈴木一郎さん)に相談し、それに応えて誕生したのが「ビーフパイ」だったのだ。」
    『ランチョン』ホームページ

     


     

     

    帰省から帰ってきたばかりのほしばあさみだが、活動的であることには変わりなく、どこかへ出掛けたいという土曜日。ひとまず『東京国立近代美術館』に行くと決まる。で、ここからが重要なのだけれど、2人で出掛けるときには必ず「どこで食事をするか」を事前に確定させておかねばならない。彼女は腹を空かせると異常に機嫌を損ねるので。

    さて、そのランチだが、盆時期の土曜日ということもあり、確実に夏休みではない店を選びたい。結果、神保町の『ランチョン』に行きたいと思った。坪内祐三の日記に頻出するビアホールかつ洋食店。僕自身、何度か店の前を通って、その店構えを気に入っていた。しかも土曜日ならランチ営業もしている(普段からランチ営業をしているが、今はシェフ不足につき、土曜日しかやっていない)。

    食にすこぶるこだわる彼女なので、提案も慎重に。ホームページにあたると、引用に突き当たった。「吉田」とは、吉田茂の息子で、作家の吉田健一のこと。酒にまつわる随筆も多く、食通としても知られる彼はこの店の常連だったらしい。俄然行ってみたくなるが、このネタが彼女に刺さるかは怪しいので、とりあえず、老舗の洋食店であること、ランチが食べられるのは土曜日だけであること、店から近美までいい散歩になる距離感であること、などを伝え、ご了承いただく。

    果たして『ランチョン』はいい店だった。設えからコースター、紙ナプキンに至るまで気が利いていて、週替わりのランチメニューはなかなかボリューミー(この日は、グラタンとメンチカツだった)。お腹いっぱいになってしまったので、ビーフパイはまたの機会に。(017)

     

     

    エフェメラ/「一日だけの、短命な」を意味するギリシャ語「ephemera」。転じて、チラシやポスターなど一時的な情報伝達のために作成される紙ものなどを指す。短命だからこそ、時代を映すとされ、収集の対象になっている。

    書き手

    迎亮太

    迎亮太

    東京都国立市/32歳

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