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    エフェメラ!

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    「これからは通常営業ですから」中華料理店スタッフ

    アルキメデスは浴槽から溢れる水を見て「ユリイカ!」と叫んだ。私たちは日々見聞きする言葉に触れては「エフェメラ!」と叫ぶともなしに記録しようと思う。言葉は儚いものであるからこそ、今このときを確実に残してくれるから。

     

     


     

    「これからは通常営業ですから」
    中華料理店スタッフ

     


     

     

    アルバイトしている書店の裏通りに、馴染みの中華料理店がある。7、8年ほど前に書店の店長に連れて行ってもらったのが最初で、5年ほど前から毎週1度、つまり出勤のたびにそこで休憩時間を過ごしている。顔を覚えてもらえたようで、ここ2年ほどは毎度、少しサービスをしてもらえるようになった。

    そんなお決まりの店に、この夏、変化が起きた。アルバイトの休憩に入り、いつもの通り裏通りを行くと店が閉まっている。その押しボタン式の自動ドアの扉には「ガス工事が終わり次第営業します」という貼り紙が。以来、この貼り紙を横目に通り過ぎて、スーパーの弁当、ラーメン、ファストフードを食べてきた。つまりほとんど3週間も休業していた。「このままなくなってしまうのでは……」と気を揉んでいたけれど、昨日、ついに店が開いていた。

    スタッフの人に工事について少し聞いてみたい気もしたけれど、14時過ぎのぼちぼち忙しい時間帯なので、黙々と日替わりの麺を啜った。帰り際、お会計のときに「これからは通常営業ですから」とひと言もらう。「お店どうなっちゃうんだろう、ってちょっと心配だったんですよ」と言いかけて、やはりやめて、いつも通り「ありがとうございました」と店を出た。(025)

     

     

    エフェメラ/「一日だけの、短命な」を意味するギリシャ語「ephemera」。転じて、チラシやポスターなど一時的な情報伝達のために作成される紙ものなどを指す。短命だからこそ、時代を映すとされ、収集の対象になっている。

    書き手

    迎亮太

    迎亮太

    東京都国立市/32歳

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