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    風早草子

    風早草子
    カザハヤソウシ

    認めざるを得ない性癖

    前から薄々自覚していたが、ここ数週間、いよいよはっきりしてしまった。あくまで仕事上に限っての話だが、非常事態が好きだ。

    人と争うことは好まないし、平和を愛する人間だと思っている。

    日々それなりに真面目に仕事しているつもりだ。だが平時のルーティーンにきっと潜在的にいつもイラついて退屈しているのだろう。変えたいことがなかなか変えられない閉塞感とか。でもこの1年間、かなり野心的に改革に取り組み、実績を積み重ね、それなりに充実感を感じてきた。

    そんな中、担当業務がここ数週間、いわゆる危機管理事案となってきた。こちらの落ち度は全くなく、完全にもらい事故だが、結構重大。我々だけでリスクを受け止めきれないので、関係部署だけでなくリスク管理セクションも入れて危機管理体制を構築し、それを回さなければならない。

    面倒でリスキーな業務なのだが、これに全く苦痛を感じないのだ。そして「ああなったらどうしよう?こうなったら大変だ!」という心配の感情が全く湧き上がってこない。むしろ「あの手も打とうか?あの部署も使おうか?」みたいなアイデアが次々出てきて、矢継ぎ早に策を打ちまくっている。明らかにアドレナリンが出ているし、正直言って事態を楽しんでいる。変態なのか?

    職業病の部分はあると思うが、非常事態は日常の閉塞を打ち破る好機でもある。ビッグチャンスだ。今回も長年の慣習で行われたきた業務のやり方を大きく変える提案をすでに2個通した。一つは他部署所管のデリケートな業務なので、平時に外から手を突っ込むのは大変難しい。だが今回、危機管理の大義をかざして強く押して実現に成功した。しかも形式的にはあちらが自主的に判断した形になっている。ある意味完璧だ。

    この先、さらにリスクが顕在化してくると組織内の注目がもっと高まる。メガチャンス到来だ。どんな方策を打とうか?楽しんでいることを悟られないように気をつけないといけない。

    しかし自分的には認めざるを得ない。非常事態が好きだ。変態だ。

    でもあくまで仕事上のことだけで。自分にも家族にも、そしてあまねく世界の人々にも、事故や災害の非常事態が降りかからないことを心から祈りながら日々生きたい。

    書き手

    海秋紗

    海秋紗

    神奈川県葉山町/57歳

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