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    風早草子

    風早草子
    カザハヤソウシ

    お向かいの解体始まる

    今の家に住んで9年目だが、お向かいの家には、ずっとおばあちゃんが一人で暮らしていた。朝、デイサービスの車が迎えに来て施設に行っていたが、家にいる時、天気がいいと、ジャンバーを着てキャップをかぶって、塀に手をかけて家の前を歩いていた。すでに認知機能は低下されていた感じで、挨拶くらいしか交わしていなかったが、にこやかで静かな方だった。時々息子さん夫婦が世話をしに来ていた。世代は私と同じくらいだろうか?家からやや離れた場所で転んで人が集まっている現場に長女が通りかかり、「うちの向かいの家のおばあちゃんです。」と連れて帰ってきたこともあった。

    それが数年前、施設に入られたようで、お向かいは空き家になっていた。うちの父が亡くなった3年前より先だったか、あとだったか?そしていつだったか、息子さんご夫婦が喪服で来られているのを見かけたことがあり、お亡くなりになったのだろう、と察していた。以降も息子さんが家に風を入れるために、時々訪れていたが、しばらく前に「解体して更地にして売ることにしました」と挨拶に来られた。そして今日から解体工事が始まった。

    おばあちゃんと特段の交流があったわけでもないので、我が家にとっては単に向かいの景色が変わるだけで、私としても特に感慨とかがあるわけではない。この辺りは今、更地になるとすぐに次の買い手が付くので、きっと新しい家が程なく建ち、新しいお向かいさんが来るのだろう。そもそも我が家の場所も以前は大きい屋敷が立っていてお年寄りが暮らしていたらしい。町内に借家住まいしていて、家を建てようと考えていた我々は、更地になったタイミングで不動産屋さんから紹介された。初めて見にきた時、すでに更地だったが、当然、我が家の場所にもその前の歴史があったわけだ。Googleのストリートビューで見ると、以前の家並みも見ることができたりする。だから何だということもないが、私たちの町の風景、人の暮らし、思い出、歴史は日々上書きされている。当たり前のことだけど、万物は流転している。

    巣箱のシジュウカラはいよいよ大きくなってきた。ヒナはもう巣箱の中を歩き回っているようで、ヒナの声も賑やか。ヒナが巣立つ前に、ちょっと巣箱の中の動画をスマホで撮らせてもらう。こういうことができるのは家主の特権。(笑)シジュウカラはこの程度のことは気にしない。巣立ちは来週か?巣立ったら巣立ったで親鳥は大変だと思うが、とりあえず、巣立ちに向けて頑張れシジュウカラ!

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    書き手

    海秋紗

    海秋紗

    神奈川県葉山町/57歳

    ©30YEARS ARCADE