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    風早草子

    風早草子
    カザハヤソウシ

    歩道橋で再会

    今日も大小色々あり大変忙しいが、午後仕事を中抜けして大森の実家へ。母が客観的に見て一人暮らしが限界なので兄と私はもう決断を下している。具体的にXデーを考えるステージに来ている。穏便に済むはずはないが、覚悟を決めてやるしかない。というような手続きや相談を済ませて、職場に戻ろうとしたところで、実家マンション前の歩道橋で友人とバッタリ会った。たぶん7年ぶりくらい。

    友人の少なさに定評がある(笑)私にとって、数少ない間違いなく「友人」と言える男だ。出会ったのは、今実家があるマンションに引っ越してきた小5の時だ。彼は地元だったが、同じように親がマンションを買ってここに住み始めていた。うちが10階、彼の家が12階という関係だ。ちなみにいま熊本に住んでいるもう一人の悪友が14階だ。学校ではマンション名にちなんで「ハイツ軍団」とか言われることもあったけど、別に特に悪いことをしていたわけではない。転校してきた私は12階の男と同級生になった。私は小3から野鳥の会に入っていてすでに一端の野鳥小僧だったが、彼のお父さんが当時、埋立地が野鳥の楽園となっていた大井埠頭で自然観察会を主催するメンバーの一人だった。野鳥が好きだとクラスの担任に言うと、彼のお父さんが近くで観察会をやっているから参加したら?と勧められて、以降、毎週のように一緒に鳥を見にいくようになった。彼の方はお父さんが観察会をしていたものの、当初そこまで鳥が好きだったわけではなく、むしろかなりの実力の剣道少年だったのだけど、私の影響もあってか?毎週のように一緒に鳥を見にいく仲になり、競い合って観察や識別の技量、写真を撮る技術を磨いた。一方、私も彼の道場に入門して小5から剣道を始めて中学に入るまで毎週3回の稽古に通って大会にも何度か出た。つるんで遊んだ思い出は数限りない。地元の大井埠頭だけでなく、子どもだけで遠征にもたくさん出かけた。さほど鳥に興味もないくせにこれには14階の男もよく同行していた。私の母は子供の行動に干渉が多く、子どもだけで街に遊びにいくとか、なかなか認めないタイプだった。しかし野鳥を見にいく、と言うと割と簡単に子どもだけで電車で遠くに出かけることを認めた。ということで、私にとっては鳥を見にいくことは、うるさい母の干渉から逃れられることでもあった。もちろん言った先で鳥は見るのだけど、子どもだけでの遠出、そして飲食店での食事とかが楽しかったのだ。高尾山とか、多摩霊園とか、中には朝4時の電車に乗って小学生だけで千葉の銚子まで行ったこともあった。鳥を見にくだけでなく、釣りにもよく一緒に行ったな。つまりつるみまくっていたわけだ。大学生の時も真冬の道東を免許取り立ての私の運転で二人でレンタカーで巡ったがある。

    私は鳥を通じて自然保護や開発など社会への関心を高めていった関係もあり、その後ジャーナリズム、メディアの道を志していったのだが、彼の方は純粋に鳥の研究者を志していった。私が札幌勤務だった時に彼が北大の大学院に来たため、札幌で彼の調査を手伝ったこともあるし、彼が撮影した映像を放送で使ったこともある。私が東京勤務だった頃、夏休みの時期が合って、一緒にオーストラリアで鳥を見たこともあったな。彼は南アのダーバンで鳥の学会があり、その帰りにパースに着くのでそこで合流みたいなかなりアバウトな待合せ。当時、スマホどころかまだパソコンも持っておらず、日本を出る直前にHotmailのアドレスを作って伝え、あとは何とかなるだろう、みたいな。若い頃は行き当たりばったりだ。結局連絡の行き違いもあり、私はパースに2日くらい早く着いてしまい、彼が来る前にだいたいのところは見尽くしてしまったので、奴を空港に車で迎えに行って驚かしてやろう、とろくに英語も話せないのにノコノコとレンタカー屋に行って何とか車を借りるのに成功して、あとはそこらを走り回って、空港にも迎えに行った。思い出すと行動が若いな。そのあとはダーウィンで国立公園のツアーに参加したり、当時まだ立ち入りができたエアーズロックに登ったりしたものだ。

    私が結婚した後も、広島の家に泊まりに来たことがあった。その時は鳥を見に行かず、二人で釣り舟に乗ってタチウオのジギングに行った。ここまで書いていて思い出したが、そういえば彼の結婚式は頼まれて私の妻が披露宴の司会をした。広尾の社宅に住んでいた頃だからこちらはもう子供が二人いたはずだが、妻もよく引き受けたものだ。

    互いに家庭を持ち、子どもができると、さすがに若い頃みたいにつるんで遊んでもいられないので、互いの動向をFBで何となく知っている、というのがここ10数年の関係。その間も互いに仕事は頑張り、彼は10年ほど前、北大の教授になった。今や野鳥の生態学の世界では著名な研究者だ。ちょうどその頃、札幌へ出張があり、その時は盛大に飲んで祝ってやった記憶がある。

    FBなどで稀にコメントのやり取りをすると、だいたい「そのうち飲みたいな」みたいな話になるのだけど、互いに愛想なしのものぐさなので、飲むどころか、会うことすら実現せず、何年も過ぎる、ということが続いている。そんな関係なのが、今日は歩道橋でバッタリ会って互いにちょっと驚いたわけだ。まあどちらも親はまだマンションに住んでいるのでそこまで驚くことではないのだけど。(笑)

    歩道橋の上だったけど、結局立ち話で近況など10分くらい話し込んでしまった。こっちの仕事も大変だけど、若い学生を指導する教授も大変だな。そして珍しい出会いなので、帰ったら近影を妻に見せてやろうとスマホを出したら「せっかくだから二人で撮ろうぜ!」と言われて、57歳のおっさん同士で歩道橋の上で自撮りツーショットを真っ昼間に撮影。(笑)ここには載せないが、これが二人とも妙にいい表情で撮れ、良い写真になってしまって、帰ってから長女に見せて笑っている。母の件は気が重いが、今日は楽しい日だった。

    書き手

    海秋紗

    海秋紗

    神奈川県葉山町/57歳

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