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    風早草子

    風早草子
    カザハヤソウシ

    終息へ

    丹沢にも雪が積もる朝。私の仕事もようやく終わりが見えてきている。

    ただその前にケリを付けておかないとならない件がある。今回私が激怒した案件。先週の後半、念入りに逃げ道を塞いだ上で、私から渾身の一撃を放ってある。詰将棋としては終わっている。ただ先方からまだ投了の合図が来ていない。単に忙しいのかもしれないけど、まだ逃げ道があるかも、と悪あがきを考えているのかも?とこちらも疑念を持たざるを得ないじゃないか。週明け月曜日までリアクションを待ったが、何もなかったので、朝6時に念押しのメンションメッセージを送った。もしかして降参じゃないなら、麓から火をかけるけど?という乱暴なものにならざるを得ない。20日家に帰らずに仕事した人間の精神状態を甘く見てもらっては困る。午前中のうちに先方のトップが「直接対応について説明したい」とすっ飛んできた。最初からそうすりゃいいんだよ。

    ガラが悪くて嫌になるけど、本来私はケンカは嫌いだ。全ての人と穏便に穏やかに仕事はしたい。マウントを取るとかほんとどうでもいい。この数年、心底、男気だけでこの業務に取り組んできた。あ、ジェンダーな意味はなくて、言い換えると何だろう?義を見てせざるは、というやつだけだ。リスクばかり多くて面白くもないこの業務を好き好んでやるほど、私だって変態ではない。この災厄のような業務に関わる全国の担当者の負担や不安を軽減し、コストや要員も軽減して効率化することは喫緊の課題だと思ってきたし、これをできるのは私しかいない。そのために全国のどんな若い担当者にも丁寧に寄り添ってきたつもり。威張ったり偉そうにしたことは一度もない。もちろんそんな必要もないのだけど。そういうプロジェクトを意味の分からん独善的な振る舞いで汚した輩については、私もリーダーとして容赦するわけにはいかない。もちろん私自身激怒してるのだけど。ケンカは嫌いだけど、苦手ではない。というか、むしろ大得意な方だ。そういう自分の能力を本当は使いたくない。でも仕方がない。今回の私が敷いた包囲網には一部の隙も残していない。詰将棋は最初の一手で終わっている。それに気付けないなら王将の前に飛車でも置いてやるか?と思っていたけど、トップが頭下げてきたので、この勝負は終わり。

    心身ともにまだ軋み続けていて、回復はかなり遠そう。腰もやばい。別室のソファに横になるとあっという間に寝落ちしてしまう。業務スマホを胸に乗せて、振動するたびに内容を確認して業務の進捗だけチェックする。

    そしてとうとう16時過ぎ。本部担当分が全て完成という連絡がきた。終わった。

    実施本部に戻ってメンバーを労い、全国に向けて区切りの発信。数が膨大な本部が制作には一番時間がかかる。全国はすでに終わっているはず。全国に向けて、協力への感謝、担当者への労い、そして簡単な総括など。まだ業務は終わりではないが、ここが一つの区切りのタイミングになる。私の発信に全国の担当者から様々なリアクションマークが付けられていく。今回やりとりをした名前もたくさんあり、もはや懐かしい。

    そんな中、近畿地方の若い女性の担当者から、個人のチャットにメッセージが来た。彼女は3年前、我々が四国でトライアルをした時の現地の担当だった。その後、近畿に異動したあともこの業務を担当しており、私の進めて来たDXをよく理解して支持してくれていた。その彼女、転職するということ。しばらく前から決まっており、今週金曜日が最終出勤日ということ。そこに偶然、最後にこういう日程の仕事がきたわけだ。若いがしっかりした子、ということは印象にあるのだけど、四国で仕事した後、会ったことも無いので、正直顔も覚えていない。ただその後も、私が全国から発信するメッセージにいつも素早いリアクションをしてくれたり、地方から見た気付きを伝えてくれたり、私の改革を支持してくれる姿勢は感じてきた。そういう担当者はお陰様で全国に結構いる。そういう支持を支えに私もモチベーションを保ってきた一面がある。転職する彼女の最後のメッセージには「ここまで改革を進めてきたことを心から尊敬します」という言葉があった。泣けちゃうほど嬉しいのでこれは日記に書かないといけない。(笑)同じ場所で仕事はしていなかったけど、同志、仲間だったと思っていることを伝えて、彼女の新天地での活躍を祈る旨、返信しておいた。

    久しぶりに少しスッキリした気持ちで家路に着く。喧騒の渋谷もこういう日は美しく見える。

    仕事のことばかりじゃなくて家族のことも書いておかないといけない。ドローンの制御に悶絶していた長女の卒業研究。無事終わったそうな。というか、発表で研究室のMVPに選ばれたとか。すごいな娘。みんな頑張ってる。トーさんは誇らしい。

    書き手

    海秋紗

    海秋紗

    神奈川県葉山町/58歳

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