何とか生きている
「絶対に倒れないでください」 「あなたがいなくなったらオシマイです」 かつてないほど、周囲から気遣われている。(笑) 倒...

風早草子
カザハヤソウシ
2026年3月2日

最近、無茶苦茶なニュースばかり。何でもあり、がデフォルトになってしまった感。第二次大戦の教訓と反省が薄れているのだろう。新自由主義という利己的価値観が蔓延しているのもあるのだろう。この潮流に棹さす方法は何だろう?
腰の調子がまだ悪くて、長く走るのはやめた方がいい感じ。何しようかな、と思っていたら、起きてきた妻に神社に行こうと誘われる。先月、初めて行った一日のお祓いだ。2月は28日なので、3月1日も日曜日ということ。せっかくなので出掛けて、平和を祈願。

妻は今日は東京まで行って書道の先生の特訓。ご近所付き合いみたいな感じで始めた習字だけど、作品展に出すとかで割と大袈裟な話になっていて、最近は時間があれば字を書いている。結構楽しそう。妻は私と違って字が上手い。羨ましい。
楽器演奏のセンスがない、球技が下手、など数多くある私のコンプレックスの中でも字が下手というのは大きい。能書家が羨ましい。これでも子どもの頃、習字教室に通わされていたのだけど、当時から白い紙にきれいな字が書けるイメージがそもそも持てなかった。フリーレンも言うようにイメージできないことは魔法でも実現できない。たぶん私にはその辺のセンスが致命的に欠落しているのだと思う。きれいな字を書く、というのは私にとって魔法のような無理筋の技だ。
能書家というのは、昔は揮毫を頼まれることが多かったらしい。有名なのは幕末から明治の山岡鉄舟とか。鉄舟は、若い頃は清河八郎の口車に乗せられて新撰組の元となる浪士組の設立に巻き込まれたりしたが、のちには単身官軍に乗り込んで、西郷と交渉して江戸の無血開城の立役者になっている。その後、徳川家に従って静岡に行き清水次郎長と意気投合したり、西郷に頼まれて宮中に出仕し、明治天皇に仕えたりしてる。この人、巨漢の剣豪だったらしいが、揮毫を頼まれることが多く、それを断らなかったため、膨大な数の揮毫をしたそうな。揮毫を頼まれる、ということ自体が格好いい。羨ましい。ちなみに木村屋のあんぱんが大好物だったらしく、木村屋の看板も鉄舟が書いたらしい。
能書家というと、とどのつまりは、空海になると思うけど、空海になるとまた、意味分からんエピソードが出てくる。唐の皇帝順宗に頼まれて、宮中の壁に書を書くように言われるが、その壁というのが元は王羲之の書が書かれていた壁で、薄くなったからそこに新しいのを書いてね、というプレッシャーmax案件。失敗すれば処刑されかねんのでは?しかし、空海はたちどころに5本の筆を使って見事な書を書き、皇帝と唐の文人を唸らせたらしい。ホンマかいな。5本の筆を両手、両足と口に咥えて同時に操って一気に書いた、という伝説もあるらしい。ワンピースのゾロじゃないんだし。ただ実際に順宗からは「五筆和尚」という異名をもらっているらしい。そもそも東の蛮国からきた一介の留学僧が、唐の皇帝に頼まれている、という時点でおかしいのだけど。そして空海、長安にいたのは1年半くらいしかない。そのわずかな期間に密教を根こそぎ学び、書家としても皇帝から指名される名声を高めているわけだ。意味分からん。さすが平安時代の大谷。(笑)

それはさておき、今月のナショジオがまた興味深い。最近話題のグリーンランドネタ。10世紀から11世紀頃、優れた航海術でヨーロッパ各地を襲撃していた北欧の人々、いわゆるバイキングは、一方でアイスランドとかグリーンランドへも入植をしていてそういう土地では酪農などを営み平和に暮らしていた。幸村誠の漫画「ヴィンランドサーガ」の主人公トルフィンはアイスランドの生まれだ。ヴィンランドサーガは壮大な物語だけど結構面白い。父の復讐を誓って血塗られた戦いの中で生きてきたトルフィンが、戦いを捨てて不戦の誓いを貫きながら、理想の国、ヴィンランド、すなわち北米を目指す話だ。北海の覇者となりイングランドやデンマークの王となったクヌートとか、実在の人物も出てきてある程度史実に則っている。
話は逸れたけど、ナショジオの特集はさほど新しさは感じなかった。グリーンランドのノルウェー人入植地は、当時の建物などを残して人が消えてしまったため、ミステリー的な扱いがされてきたのだけど、ジャレド・ダイアモンド氏が「文明崩壊」でかなり詳しく分析している。この本は2005年に出たものだけど、ジャーナリストとして「やられた!」と思うほど、見事でスリリングな本だった。
グリーンランドのノルウェー人入植地の崩壊は、気候の変動とか、牙が貴重品として価値が高かったセイウチの乱獲による減少とか、放牧、製鉄などによる環境の劣化、資源の枯渇など色々あった。ただ興味深いのは、その頃、グリーンランドには、極北生活に高度に適応したイヌイットの人たちが進出してきて、ノルウェー人と邂逅していたことだ。ノルウェー人は環境が寒冷化して資源が枯渇する中、家や船を作る木材や暖房の燃料に困り追い込まれていく。しかし、イヌイットは海獣の脂肪を燃料に使い、その骨や毛皮で作ったカヌーで海獣を狩り、冬季の家は雪で作ったイグルーで凌ぐ技術を持っていた。しかし、その手本を学ぶことなく、ノルウェー人入植地は崩壊に至ったわけだ。安直に今の教訓にはできないけど、色々示唆に富んだ話だ。ナショジオをきっかけに久しぶりに読み返した。この本、書き出しからいきなりスリリングでクールだ。

ヒマな日曜日、他にもムクドリの食性についても色々考えていたのだけど、その話はまたいつか。夕食は先週のモツが残っていて冷凍庫にあるので二週連続のモツ鍋。キャベツがうまい。この週末もお疲れ様でした!


神奈川県葉山町/58歳