お便りフォーム

    お名前(ニックネーム)*

    Eメール*

    宛先*

    メッセージ*

    島縞

    島縞
    シマシマ

    やわらかく包み込むように

    娘は、言いづらいことがあると「ギューして」と手を広げて近づいてくる。不安な時なんかもそう。

    昨日、小豆の蜜漬けを食べてる最中にもやってきた。
    だから、豆のかたさとか、味がいまいちだったかな?と思ったけれど、娘からも私からも言及はしなかった。

    今朝、きなこ餅が食べたいと言うので支度をしていたら、今だと察知した娘がおもむろに伝えてくれた。
    「あんこは、もうちょっと甘いほうがいいな。あと、豆はもうちょっとやわらかいほうが好き」
    そうだろうな、と思った。今回は完全に私の好みの甘さとかたさで作っているから。

    娘がもっと小さい頃、伝える言葉が分からないだろうと、選択肢をたくさん出して答えさせることも多かった。けれども、もう9歳。自分の言葉がしっかり育ってきた。
    娘の気持ちに気づいていても、本人が伝えてくるのを辛抱強く待つ。そう出来るようになってきた。

    昼下がり、またもや近づいてきて、私の手を取り廊下の向こうを指し示す。冷蔵庫のことと思って、
    「ん?まだおなかすいてる?」と聞けば、首を振ってニヤニヤしている。あぁ、自分の作業部屋にどうぞってことね。

    いっとき、部屋でひとり作業に没頭して廊下を進めば、娘が向こうからやってきてギューする。
    そう言えば、ご乱心の際にそれはギューじゃない!と言われることがあって、機嫌が良さそうな娘に、ちゃんとしたギューの方法を伝授いただく。うん、やっぱり違いが分からない。きっと気持ちが大切。

    そろそろダイニングに戻ってきてもいいよとのこと。母はもう一段落してから戻ろうかなと思う。
    作業部屋で集中していたら、娘がやってきて改めて「来てもいいんだよ」を連発するので、「行っていいの?」と言ってから、ダイニングに移動することにする。

    16時を回った。静かにやわらかく霧雨が、すぐそこの山の木々や下の草を濡らし始める。ベランダの手すりに出来た水玉は、少しずつ少しずつ膨らんでいく。
    だんだん晩ごはんとお風呂の支度を視野に入れながら、1日をしまう準備を始めることにしよう。

    書き手

    ひらのあすみ

    ひらのあすみ

    長崎県五島市/43歳

    Instagram

    ©30YEARS ARCADE