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    島縞

    島縞
    シマシマ

    サイレンから始まる、数珠つなぎの記憶

    いよいよ蝉の鳴き声が窓を突き破って聞こえてくる。
    それでも、朝の窓を開ければ自然の風の心地よさにふーっと息ももれる。

    今日は防災無線が7時のサイレンを鳴らした。と思ったら、昼過ぎて今度は警察署からのお知らせで、行方不明者の情報が流れる。
    昼間の暑さの中でのことに心配しつつ、昔のことを思い出した。

    95歳まで長生きした母方のじいちゃんは、一度行方不明になったことがあった。
    どこを探してもいなくって、大人たちがあちこち探し回り、山のそばの畑で溝にはまっていたところを無事に発見されたそうだ。農家で、いつまでも元気に畑に出ていた。
    この日も、畑を見に行っていたらしい。
    若草色のカブで、どこまでも走っていくじいちゃんだった。

    孫が小さい頃は、無口にほっほっ、と朗らかに笑って静かに座っている、優しいじいちゃんだったけれど、若い頃はそれはそれは厳しかったそう。
    戦争も経験しており、コップを持つ手はプルプルふるえていて、並々注ごうものなら口に運ぶ前に半分以上がこぼれた。
    みんなでそんな様子を笑ったこともあった。
    そんなじいちゃんに反して、ばあちゃんはハキハキしていて、作ってくれるものは何でも美味しかった。

    毎年、年末には餅をついて、みんなでくるくると丸めた。そばも打ったし、かんころ餅も作った。
    夏には味噌。小さい子どもが何人でも水遊びできるくらいの大きな容器にいくつも。これが甘くて美味しい。母がそれを受け継いでくれたので、毎年お裾分けしてもらう。だから、味噌は買ったことがない。

    子どもの頃から、農作業のお手伝いもしていたな。みんなでワイワイ朝と昼のおやつを食べて。
    年中行事もよくやった。しょっちゅう集まって、作ってくれたものをおなかいっぱい食べて。大人がずっとしゃべっている中、話に加わりつつ、テレビを見つつ、大人のおつまみのさきイカをもらって食べつつ。

    賑やかで楽しかった思い出に、ひょんなことから繋がれた1日となった。

     

    お風呂からあがった頃、無事見つかりました、と防災無線が知らせてくれた。

     

    そして本日、娘の大切なお友だちであるレッサーちゃんが、こちらに引っ越してきた。ホコリから守りたかったのだそう。
    見えないだけで、ここにも同じようにホコリが溜まるのだよ、と伝えると、それはいいから!と一喝された。そういうひとことは要らないのだ。

    書き手

    ひらのあすみ

    ひらのあすみ

    長崎県五島市/43歳

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