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    Sophy's philosophy

    Sophy's philosophy
    ソフィーズフィロソフィ

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    あのとき、わたしはニューヨークからイタリアに引っ越して来てちょうど1カ月が過ぎたあたりだった。夫はロンドンで単身赴任だったので、婚姻やビザの手続きなどが落ち着くまで、義父母のところにわたし一人で居候をさせてもらっていた。

    朝起きると、まだ全然わからないイタリア語で、義母がジャッポーネ、という単語を含めた言葉を言った。意味が分からないまま、直ぐにネットを見ると、NHKの中継映像が出てきた。時差でイタリアは日本より7時間遅いので、あれはきっと録画されて流し続けられていた映像だったんだろう。もしかしたら、漁港に設置されていたカメラからのライブ映像だったかもしれない。

    津波が、真っ黒などす黒い色に変化しながら、車や木や電柱をなぎ倒し、小さく映る人もどんどん飲まれていっている映像だった。

    ただただパソコンの前に座って、そうした映像を見続け、遠くにある故郷日本のことを思って涙が止まらなかった。東北に知人や家族は住んでいないものの、このどうしようもない天災において、人はなすすべのないことに、畏れの念が強く残った。

    当時、イタリア語を学ぶために、ヨーロッパ中から集まった20歳前後の若い学生たちと一緒に、大学の語学コースに通っていた。たしか翌日かのクラスが始まる前に、先生がみんなの前で「日本で起きた災害を悲しく思っています」というようなことを、わかりやすいイタリア語で言ってくれた。わたしはまだイタリア語が十分には話せなかったので「ありがとうございます」とだけ返事をした記憶がある。

    世界中から、日本の悲しみに心を寄せてくれる人がいることがわかるだけでも、ほんとうに有難いと思った。昨日、福島県の商店街で同時刻に黙とうを捧げる多くの人びとの映像を目にした。祈りを捧げる。わたしには、それしかできないけれど、遠くから、祈り続けようと思う。

    北イタリア、リグーリアの海(ジェノバの近く)↓

    書き手

    sophy

    sophy

    イタリア・ベルガモ/45歳

    ©30YEARS ARCADE