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    Sophy's philosophy

    Sophy's philosophy
    ソフィーズフィロソフィ

    when silence saves the day

    うちの夫は歯に衣着せぬ物言いが得意技だが、彼の母からの遺伝だ。そう確信した日だった。

    義父母はわたしたちの上の階に住んでいる、というか、わたしたちが彼らの下の階を借りて住んでいる。だから、毎日いきなり我が家にやってくる。

    最初のころは毎日の気の抜けなさに面食らった時期も数ヶ月あったけど、いまはもう慣れた。すでに7年くらいこんな感じだからだ。

    いきなりやってきて、あーでもない、こーでもない、と一通り気の済むまで話をするのはイタリア人の気質だと思うので、何も彼女だけに限ったことではないんだけれど。

    ただ。今日は小言が過ぎたのだ。そういうときには「聞こえないフリ、意味わかってないフリ」に徹することにしている。イタリア人同士ならばほぼ確実に大声での言い合いになる場面で、これをされると逆にイタリア人は面食らうのだ。付き合い始めの頃に、夫にも何度か言われたことがある。「ミステリアスに振る舞うのはよしてくれ」と。

    小言は、なんてことはない。「これは何、ソフィに食べさせるのは良くない」「ソフィの部屋が片付いてないから手伝ってあげたら」とか。まあ、ばあちゃんの余計な世話だ。

    わたしの日本の母は、そんなことは言わない。変なものも食べさせちゃうし、部屋だってぐちゃぐちゃだ。ゆるく、あそびがある。そんな母は、ほんとうにだらしがないけれど、かわいい。

    だけど、アイアンウーマンみたいな義母からは真っ向から指摘が入る。こりゃ疲れる。反論もしたくないし、イタリア語でもうまく言えないからわたしは黙るのだ。黙って余計なカロリー消費を防ぐことに徹する。

    イタリアのマンマだから、本当に腹が立ったり言い返したいときは、わたしは発言する。そのへんは、まあフラットだとも言える。たまに、勘弁してくれと度を超えたときは、言い返して、さらに彼女の息子(わが夫)にもホウレンソウする。息子はかなりの程度で遺伝していながらも、彼なりにわたしの気持ちが理解できるところもあるようだ。笑って「忘れろ」みたいなことを言ってくる。

    そしてわたしは、たぶん2日くらいで忘れる。

    義父母にはソフィの相手を週に何時間かしてもらっているから、わたしの時間も取れるわけで。それを理解しているから、ドンパチ交戦はしないようにと冷静に実利を取りたい自分がいる。

    沈黙が意味するものを、イタリア人がどれほど理解しているかはわからない。発言しないやつは考えてないと見做される、と言われたりする土壌もあったりする。まあ、それでもいい。自分は考えていると、ここで確認できたし。ただ平和に生きたいのである。

    かきぬまさんの次男くんの絵に癒されて、本日は穏やかに眠れそう。抜けた歯茎と歯のディテールがかわいすぎ。そして、なんとすてきな花束。お花をプレゼントできる人は、それだけですてきな人だってわかるとわたしは経験値から確信している。葉っぱの丸と、青みのある棘っぽさのバランス感といったら。

    うちの玄関は、かぼちゃを飾っている。

    書き手

    sophy

    sophy

    イタリア・ベルガモ/46歳

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