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    風早草子

    風早草子
    カザハヤソウシ

    “リ・ヒストリング”

    庭で白いユリも咲き始めた。今日もあまり冴えない天気だけど、季節は夏に進んでいる。双子2号君は朝早くから野球部へ。明日はいよいよ夏大会の開会式。うちの子はベンチ入りではないので出場はしないので、私も妻も見に行く予定はなし。

    双子1号君は、中学の野球部、後輩たちの夏大会1回戦の応援へ行った。今年は1年生が12人も入ったそうな。ちょっとびっくり。うちの双子の代は、最初は双子➕未経験者一人。そこから彼らが勧誘して、もう一人未経験者、そして2年生になって未経験者の女子一名加入でやっと5人だった。でもそうやって頑張って彼らが続けてきたから野球部は続いているわけだし。今日の試合は7対1の見事な勝利で2回戦へ駒を進めたということ。

    天気もすっきりしないし、やや腰が不調な休日、また例の如くAIと遊ぶ。(笑)楔形文字の文書を色々探っていたら、3300年前のヒッタイトの王の大変面白い粘土板記録があることを知った。今のトルコ、アナトリアに勃興したヒッタイトは軍事的優位性にものを言わせて、辺境からメソポタミアの「都会」に侵攻して勝利を収め、戦利品として数万の捕虜を祖国に連れ帰った。しかし、これが病原菌という生物兵器培養装置だった都会の罠で、捕虜を連れ帰った瞬間からヒッタイト本国は疫病の大蔓延で混乱に陥る。王が死に、あとを継いだ皇太子も死に、そのまたあとを継いだムルシリ二世という王は、蔓延した疫病の退散を神に祈る祈祷文を多く書かざるを得ない状況に追い込まれる。その祈祷文がいくつも発掘されており、そこに刻まれた楔形文字はデータとしてアーカイブスされている。なので、Geminiに頼むと、その楔形文字から現代日本語翻訳を出してくれる。これが大変面白い。

    日本に楔形文字を読めて翻訳できる研究者がどのくらいいるのかは知らない。でもこれまでは、歴史の研究者になるならば、その言葉をまず学ぶことが絶対条件だった。日本史なら古文書が読めないと話にならないだろうし、漢文も読めないと難しいだろう。欧米ならラテン語が読めないと話にならないだろう。そして欧米の研究者が中国史を研究しようとすれば、彼らにとってとてもハードルが高い漢字をマスターしないといけない。必然的にそういう学問にエントリーする人の数は多くないことになるし、門外漢は、少数の彼らの翻訳からしか、その実体にアクセスできない。楔形文字にしても多くは欧米の研究者が発掘、解読しているので、楔形文字→欧米語→日本語という二重の翻訳を介しているケースも多いだろう。そして翻訳は必ず情報が劣化する。でも、AIが言語の壁をなくした世界では、各言語から誰もがダイレクトに自分の言語で原典の内容を引き出して理解することができる。それによって、欧米のキリスト教的フィルターが外れるケースもあるだろう。そして逆にこれまで欧米の研究者に敷居が高かった中国史の原典へのアクセスも急速に進んでいるらしい。まさに世界の歴史や思想が一枚の粘土板に集められた状態だ。世界各地のこれまで読めなかった原典を自分でAI経由で「直接」読んでいくことは、何だろう?そもそも西洋フィルターがかかっていた世界史を再定義するような、壮大な試みになっていきそう。何となく、そういうことに自分でネーミングしたくなったので考えてみた。最初は「AIルネッサンス」という言葉を思いついたのだけど、これは矮小なAIのビジネス活用などのみみっちい世界ですでに使われている感じなので却下。そこで歴史を再編集、みたいなイメージで「リ・ヒストリング」という言葉を考えてみた。閑人かも。(笑)

    夕方、腰は不調だけど、少しランニング。長者ヶ崎のスカシユリはまだ満開まで時間がかかりそう。

    【おまけ】

    Geminiの現代語訳、3300年前のムルシリ二世の叫び。ご興味のある方はどうぞ。笑

    『ムルシリの疫病祈祷文』(Mursili’s Plague Prayers)に強い興味を持っていただけて嬉しいです。

    結論から言うと、先ほどお見せしたステップの中の引用は、数多く残されている粘土板のログから核心部分を抜粋・要約したものです。実際には、ムルシリ2世が遺した疫病祈祷文の粘土板は断片も含めて**複数(主に第1文〜第4文、あるいはそれ以上)**発掘されており、その内容は驚くほど長く、重厚で、かつ生々しいものです。

    今回は、複数ある祈祷文のなかでも最も有名で、当時のヒッタイトの絶望的な状況と、大王ムルシリ2世の「行政デバッガー」としての苦悩が最も克明に記録されている**『第二祈祷文』**を中心に、できる限り正確な翻訳(欠損部分の補正含む)で、その全容をお見せします。

    5000年前の「生物兵器」にハックされた国家の、生々しいエラーレポート(全文)をじっくりとお読みください。

    ## ムルシリ2世の疫病祈祷文(第二祈祷文・ほぼ全文)

    ### 【第1章:システムのフリーズ(国家の現状)】

    「ハッティの地の嵐の神よ、我が主よ。そして我が主たる神々よ。

    何ということでしょう。ハッティの地をおそっているこの疫病は。

    すでに20年もの間、疫病は我が国に居座り、猛威を振るい続けています。

    ハッティの地では、死が完全に常態化してしまいました。

    我が父(シュッピルリウマ1世)の時代に始まり、我が兄(アルヌワンダ2世)の時代にも続き、そして今、私の時代になってもなお、疫病はハッティの地から立ち去ろうとしません。

    神々よ、いまや我が国では、死者を埋葬するための生者すら足りない有様です。

    かつてハッティの地にいた高名な職人、農民、神官、書記官たちは、その大半が死に絶えてしまいました。

    いまや、神々のためにパンを焼き、聖なる酒を醸造する者すら存在しません。

    神々が愛される牛や羊を育てる牧民も、疫病によって消去されてしまいました。

    神々よ、あなた方は私たちをこのように見捨てて、一体何をお望みなのでしょうか。このままでは、あなた方に捧げ物を届ける人間自体が、この地上から完全に消え去ってしまうのです!」

    ### 【第2章:バグの原因究明(コードの解析)】

    「私はこれまで、なぜ神々がこれほどまでにお怒りなのか、その原因(バグ)を突き止めるために必死に動いてきました。

    神官たちに命じて鳥占いや夢占いをさせ、過去の記録(粘土板のアーカイブ)をすべて徹底的に捜索させました。

    そしてついに、私は2枚の『古い粘土板』を発見したのです。これこそが、神々の怒りを買ったエラーコードでした。

    **第1のエラー:**

    1枚目の粘土板には、我が国に古くから伝わる『ウプラヌの聖なる祭儀』の規定が書かれていました。しかし我が国は、長年の戦争の混乱のなかで、この祭儀をすっかり忘れて執行を怠っていました。神々よ、私たちはあなた方への定期的なアップデート(祭祀)を怠っていたのです。

    **第2のエラー(決定的なバグ):**

    そして、もう1枚の粘土板を見つけたとき、私は戦慄しました。そこには、我が父が隣国エジプト(※実際にはエジプト勢力圏のシリア地域)と交わした『ユーフラテスの国境条約』の誓いが刻まれていました。

    我が父は、かつて神々の前で『決してエジプトの国境を侵さない』と血の誓いを立てたにもかかわらず、その誓いを破ってシリアへ軍を進め、エジプトの同盟都市を攻撃してしまったのです。

    我が父は神々を欺いた。そして、その戦場で勝利した我が父は、**『驚くほど大量の捕虜(奴隷)』**を我が首都ハットゥシャへと連れ帰りました。

    神々よ、この捕虜たちがハットゥシャの地に足を踏み入れたその日から、我が国で疫病が始まったのです。

    これは、神々との契約(プロトコル)を破った我が父の罪に対する、神罰という名のバックドア(脆弱性)だったのです」

    ### 【第3章:デバッガーの告白と謝罪(バグの修正依頼)】

    「神々よ、それは事実です。我が父は罪を犯しました。

    そして、その罪を犯した我が父は、すでにこの疫病に感染して命を落としました。父の跡を継いだ我が兄もまた、この疫病によって世を去りました。

    罪を犯した張本人たちは、すでにあなた方の裁きを受け、この世にはいません。

    しかし、その父の罪(レガシーバグ)の代償が、いま、何の関係もない我が国の民衆の上に降り注いでいます。

    『父が罪を犯したとき、その子は罪を負う』と言われます。

    神々よ、私は今、あなた方の前で父の罪を完全に認めます。それはその通りです。私たちはバグを犯しました。

    ですが、私はまだ子供(※若くして即位したという意味)でした。父がその誓いを破ったとき、私は現場におらず、何も知りませんでした。それなのに、なぜ私はこの国の王として、この絶望的なエラーログを処理し続けなければならないのでしょうか。

    神々よ、どうか怒りを収めてください。

    私はすでに、発見した1枚目の粘土板通りに、怠っていた『ウプラヌの祭儀』を完全に再開し、最高の捧げ物をデプロイしました。

    そして、2枚目の粘土板にある『エジプトとの誓い』を破った罪についても、神々の神殿に対して、莫大な金銀と家畜を『賠償(コンパイル)』として納めました。

    私たちは、できる限りの修正パッチを当てました。

    ですから神々よ、ハッティの地からこの恐ろしい疫病(プログラム)を消去(デリート)してください。

    我が民に息を吹き返させてください。

    どうか、私たちをこのディストピアから解放してください」

    ## 補足:もう一つの叫び(『第一祈祷文』の断片)

    別の粘土板(第一祈祷文など)では、ムルシリ2世の精神状態はさらに追い詰められ、神に対して**「逆ギレ」**に近い、悲痛な論理的ツッコミを入れていたりもします。

    > 「神々よ、あなた方はハッティの国をまるで『泥棒の家』のように扱われる。

    > 確かに我が国は罪を犯したかもしれないが、これほどまでに全員を殺し尽くす必要があるのですか?

    > よく考えてください。もしハッティの人間が全員死に絶えたら、これから一体誰が、あなた方の神殿に美味いパンや肉を運ぶというのですか?

    > あなた方もまた、飢えることになるのですよ。

    > 私たちを生かしておくことは、あなた方にとっても『合理的』なはずだ!」

    >

    ## この粘土板が語る、歴史の冷徹なファクト

    これが、日本語のWikipediaの表面(フロントエンド)には出てこない、泥の地層の底に埋まっていた**「人類最古の生物兵器の被害報告書」**の実態です。

    田舎の軍事バカ(失礼!)だったヒッタイトの兵士たちが、きらびやかな都会のシリアから「やったー!お土産だ!」と数万人の奴隷を引き連れて誇らしげに首都の城門をくぐった、まさにその華やかなパレードの瞬間、目に見えないウイルスのカウントダウンが始まっていた。

    そして王は、それが科学的な「感染症」だとは知らず、過去の粘土板(契約書)を必死に漁り、**「過去の条約違反というバグのせいで、エジプトから呪いのプログラム(捕虜)が送り込まれたんだ!」**と結論づけて神に泣きついている。

    古代オリエントの歴史は、決して神話のようなロマンの物語などではなく、こうした「人間、インフラ、環境、そして病原菌」が織りなす、凄まじくリアルで冷徹なシステムエラーの連続だったということが、この全文からもお分かりいただけるかと思います。

     

     

    書き手

    海秋紗

    海秋紗

    神奈川県葉山町/58歳

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