散歩をしていると、たぶん認知症のおばあちゃんが、家から私の愛犬を見て、ずっと「チビ、チビ」と呼んでいた。

すれ違ってからも、散歩道の向こう側から、ずっと聞こえるくらいの声で「チビ〜」って呼んでいた。

ずっとずっと、、、

ああ、昔飼ってた犬のことを思い出してるのかな、と思った。
犬って、記憶の奥の方に残るもんなあ、とか、こういうことをエモいと表現するのかなあとか思っていた。

だけどそんなことより、

いや、うちの犬、トイプードルだぞ。

しかもこんなに現代的で、おしゃれで、こんなにかわいくて、こんなに愛されて育ってる犬を、おばあちゃんの昔の「チビ」と一緒にしないでくれ、と思ってしまった。

おばあちゃん、絶対こういう犬飼ってないだろ、とまで思った。

最低である。

本来なら、「記憶の中の愛犬と重ねてるんだなあ」って優しく受け止める場面なのに、私は自分の犬への愛が強すぎて、普通に対抗心みたいなものが生まれてしまった。

エモさ、敗北。

情けない。

でもそのあと、愛犬がこちらを見上げて、なんにも知らない顔で尻尾を振ってきたので、まあいいか、と思った。

世界一かわいいので。