アルキメデスは浴槽から溢れる水を見て「ユリイカ!」と叫んだ。私たちは日々見聞きする言葉に触れては「エフェメラ!」と叫ぶともなしに記録しようと思う。言葉は儚いものであるからこそ、今このときを確実に残してくれるから。

「Linkedinで連絡したけれど、ポルトガル語で意味が分からず、スパムだと思って無視したそうです」
ワールドカップ実況

ーおめでとうございます。

どうもどうも。

ー33歳ですかね。

1993年生まれだから、そうですね。最近、こうやって生まれ年を経由しないと自分の年齢に自信がなくなってきた(笑)

ー誕生日はなにかしたんですか?

なにってわけでもないけど、朝からフランス対スウェーデンの後半を観て、昼に神保町で取材して、そのあと古本屋流してみかさの焼きそば食べて。んで、ちょっと編集部寄って、渋谷で映画。アーと『急に具合が悪くなる』観て、国立帰っていつものとおり、さかえやで一杯やって帰り、そのあと1時スタートのイングランド対コンゴの前半だけ観ました。

ーなんか日記っぽいこと書いてますね。

え、そんな言い方しなくても。

ーそれもそうですね。どうですか、33歳。

特別な感慨みたいなものは当然ないけど(笑)、まあでもこれは毎年思うけど、もう今年も半年経ったんだなと。

ー7月1日はハーフタイムデイですからね。

1年の後半戦が始まってますよ。なんか、今日の日記はいまひとつ盛りあがんないね(笑)

ーとりあえずお祝いしてみたものの(笑)

歳とったから、ってわけじゃないんだけど、ちょっと最近思うことがあってさ。

ーはい。

自分のことなんだけどね、なんか最近、いやここ数年、古本屋に頼りすぎじゃないかと。

ーというと?

なんか困ったら古本屋なのよ。昨日も昼から三軒茶屋で取材して、気になってた松陰神社前の中華で炒飯食べて、その後吉祥寺と三鷹の古本屋流してさ。

ーおおむね誕生日と同じスケジュール(笑)

もちろん朝はワールドカップ観てるし(笑)

ー時間があれば古本屋に行ってしまうと。というか、古本屋に行くという選択肢"しかない"感じ?

そうそう。

ーまあ贅沢な悩みな気もするけど。

なんも思いつかないよりはねえ。

ーでも、なんか面白くないんですね。

そう、なんかね。

ーそれが贅沢ってもんですよ。

似たようなこと、ってわけじゃないんだけど、最近ファッションも行き詰まってる感じあるのよ。なんか着たい服がないなって。

ー急にファッション。

普段はあんまり考えないんだけどね。でも、前に、ブルータスの1000号をやったときに、ライムスターの宇多丸に話聞いてさ。

ーベストバイの特集ですね。

そのときにイッセイミヤケのプリーツプリーツを挙げてて。あれって、型くずれしないから丸めてバッグに入れておいてもいいし、洗濯機で洗えるし。でもある程度フォーマルな場所でも着れちゃう。使い勝手いいんだよね。あと、個人的には日本発で世界的アイコンっていうのもグッときてて。

ー2年前くらいでしたっけね。「プリーツプリーツ買う!」って言ってましたもんね。

まあそれは買うとしてさ。というか、話のネタのチョイスを間違えた。チノパンの話をすべきだった。

ーはあ?

いや、ずっと履いてるチノパンがあるのね。あの、例のvouのチノパンなんだけど。

ー3本使い回してますもんね。

あれがさ、ウェブショップだとすでに存在してない感じなんだよね。

ーそれはピンチ。

店行けばあるのかもだけど。とはいえそれでさ、別の可能性も考えてみようかと考えてはいるんだけど。

ーなかなか見つかんないでしょうね。

そうなんだよね。まあバリーブリッケンとかはいいよなと思うんだけど......。

ーなんか違うんですね。

なんかね、なに言ってんの? って感じなんだけど、基本的にはカルチャーとして服を着たいわけ。

ーはあ。

例えば、高円寺の最高の立ち飲み屋・きどふじのオリジナルTシャツとか、沖縄メイドの島ぞうりっていうビーサンとか、チェジュ島の市場で買った現地の漁師が着てるとか着てないとかいうレインウェアとかさ。もちろんデザインは重要なんだけど、それに輪をかけて、なにか面白いと思わせるなにかがあるものっていうかさ。

ーいわゆる「ファッション」が言うところの流行からは一線を画したいと。

まあそれもある。ポパイのスタイリストとそこ競えないし、そこにテンションは上がらないし。

ーとなったときの、vouのチノパンは絶妙ですね。

そうなんだよねえ。東京で着てる人もいないし。

ーその手の希少性は欲しいんですね(笑)

うん(笑) いいものを面白く着たいなって。

ー吉祥寺にソフツがあってよかったですねえ。

ほんとに(笑) あんな小さい店なのに、着たい服が見つかるからなあ。

ーんで、このファッションの話がなんなんでしたっけ?

ああ、そうそう。どんな服着ようかな、とか、なんか古本屋以外にないかしら? みたいな、ここ数年来スタンバイ状態の問いがあるよなあって。

ーそれが気持ち悪いというか?

そうねえ。

ーところで、今日のエフェメラはどうします?

そうねえ。「Linkedinで連絡したけれど、ポルトガル語で意味が分からず、スパムだと思って無視したそうです」にしようかな。

ーはあ?

これね、ワールドカップネタなんだけど。カーボベルデの話で。

ーああ、わかりました。

カーボベルデってね、アフリカの大西洋に浮かぶ島国で、今回ワールドカップ初出場。スペインやらウルグアイやら強豪と競って、グループリーグを突破しちゃうわけ。

ーちょうど明日ベスト32の試合ですね。相手はアルゼンチン。

7時からね、これは観るね。まあそれはともかく、このカーボベルデって、国外に出て行った移民が多いんだって。それで、サッカー協会がLinkedin使って、海外のカーボベルデ出身者かつサッカー上手い人を代表にリクルートすると。

ーカーボベルデの公用語はポルトガル語だけど、国外にいる人はポルトガル語がわかんなかったりもすると。

そうそう。日本ではそんなこと想像もできないじゃない? ってなことを、どこかのカーボベルデの試合で実況の人が話してた言葉をエフェメラとします。

ーいいんだけど、写真の説明は?

あ、あれはポパイの栞です。たぶん、50周年記念でいろいろ作ってるなかのひとつで。その記念号の後ろのほうの編集後記的なページに写真載ってるのでよろしくお願いします。

ー『散歩の達人』以来の!(笑) そろそろ終売ですが、ぜひ見てあげてください。

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エフェメラ/「一日だけの、短命な」を意味するギリシャ語「ephemera」。転じて、チラシやポスターなど一時的な情報伝達のために作成される紙ものなどを指す。短命だからこそ、時代を映すとされ、収集の対象になっている。