38週6日

前夜

夜中のうちに陣痛がきたりするのだろうか、とそわそわしながら眠りにつく。おやすみなさい。

と書いて就寝したのがたしか22時過ぎだったか。

1:30

夢うつつの中でなんとなくの腹痛を感じる

2:00

いや待てよ、これやっぱり現実で痛いじゃん?となり、陣痛カウンターを開始する。このタイミングで8分間隔ほど。もちろんまだまだ痛みは弱く、全然耐えられるレベル。様子を見るために夫と階下に降りて温かいお茶を飲む。

2:30

一時おさまる。前駆陣痛だったのかな?と。もう一度はじまったら病院に電話しようと決める

3:30

再び定期的に痛みだしたので、日赤に電話し、来院するように指示をもらう。登録していた陣痛タクシーのボタンを押すと電話が繋がり、10分ほどで配車されますとのこと。オペレーターの方、運転手の方、夜中に働く人に想いを馳せる。外はまだ暗い。家の前で手を振る夫を車窓に認めながら出発する。病院まで約20分の道のり、暗がりに煌々と光るローソンの明かりとか、大鳥神社の交差点でおそらく飲み会終わりの若者4人組が牛丼屋さんに入ろうか楽しそうに話している姿とか、何でもないけれど夜中の風景が目に留まる。東京で産むんだな、と漠然と感じる。

4:10

病院着。

陣痛タクシーの運転手さんが荷物を中まで運んでくれる。守衛さんも「大丈夫かい?」と声をかけてくれる。おじさんたちの優しさが染みる笑

分娩室に移動になる前に、前室にていろいろな検査。この間もおよそ10分間隔くらいで痛みがやってくる。

4:40

今来ている波は陣痛確定で良いでしょうとの判断で、入院決定。いよいよ今日産むんだな、の思い。もちろん「赤ちゃんに会えるんだ」もあるけれど、家を出る時もいまだ「おええ」とか言ってたので「今日でこの吐き気とも決別する」という強い気持ち。

5:30

分娩室に移動する。前回2回の出産は新潟の産院で産んでいるのだが、そこの分娩室は手術室みたいな雰囲気だった。そこから比べると普通の病室のようで、好きな音楽をかけたりアロマを焚いたり、リラックスしてお産を進めましょうという趣。ベッドも内診台ではなく普通のベッドだ。

7:00

なかなか8分間隔から進まない。計画日の無痛分娩だと促進剤と麻酔を入れるところからスタートと聞いていた。が、陣痛スタートになったので、どのタイミングで麻酔を入れるかは様子を見ながら話しながら決まるよう。

助産師さんから「もしまだ我慢できるなら、もう一歩陣痛が波に乗ってから麻酔を打つのが身体的には一番良いタイミングになると思うけれどどうですか。元々計画分娩だったし、希望があれば違った対応もできるのですが」と聞かれ「まだ大丈夫そうです」と答える。今思えばここが分岐点だったとも知らずに!笑

今回、無痛分娩を希望していて思ったのが、どれくらい痛みを緩和させたいのか、とか、どういうお産の進め方をしたいか、とか、自然分娩より自分主体の選択肢が多いんだなという印象。もちろん自分自身のことだから自分で決めるべきなんだけど、何が正解かわからぬままに、でも「多分こっちが自分にとっての正解」を見つめ直すシーンが結構あった。それはいい経験だったと思う。

8:00

朝食。

食事を摂ると2時間は麻酔がうてないとのことなのだが、まだ進まなそうなので食事をとることになる。

9:00

夫と息子たちが到着。

とはいえ陣痛がなかなか進まないので8分間隔の痛みと闘いながら、時間が進むのを待つ。20種類くらいのアロマのボトルから、好きな香りを選んだりする。痛みがやってきたら逃げるのではなく、痛みという池に敢えて飛び込んでいくイメージで30-40秒ほどの痛みのなかを泳ぎ切る(あくまでも個人的なイメージ)

12:00

再び食事時間。さてどうするか。

ここで食事を摂るとまた2時間は麻酔を打つことができない。でもなんとなく本能的に「体力的に、食べておいた方がいい気がする」と思って、昼食を摂ることに。よく「陣痛が進まなくて一旦帰宅することになった」とか聞くことがあったけれど、前回前々回のお産でそういうことはなかったので「ああ、これがなかなか進まないってやつか」などと思う。

ベッドではなくソファで食事を摂ってみる。

15:00

午前で仕事を終えた新潟の母がやってくる。

分娩室には3名しか入れないので、夫と息子たちと交代。とにかく次男の時がスピード出産だったので、せっかちな母は「もう産まれてるかもしれないな!?」くらいのイメージだったようだが、現状まだ麻酔にすら辿り着いていない状態…「16時に先生が検診するので、そこで状況を確認して次どうするかのご提案差し上げますね」と助産師さんから説明を受ける。

16:00

そろそろ検診というタイミングで急に最後の陣痛間隔がほぼ0分で波のように襲ってくる。助産師さんが慌てて股のところを押さえ、もう一人の助産師さんに「とにかく人呼んできて!」と叫ぶと、もう一人の方がすごい勢いで走って出ていく。すぐに様々な人が走り込んできて、いきなりぐわっと取り囲まれて準備が進む。どこか遠いところで「医療ドラマみたいだ…」って思っている自分がいる。

先生が入ってきて「かきぬまさん、今回担当する○○です。いいお産にしましょうね」と挨拶してくれる。その時は必死で頷くしかできなかったが「いいお産にしましょうね」って改めて今思うと格好良すぎない?思い出しても痺れるな笑

「ここまでくると、安全面から自然分娩の方が良いと思います。どうしますか、いいですか」と言われ、覚悟を決める。グッバイ、夢の無痛分娩!!!笑!

このあたりからは本当に痛みの種類が変わったことを感じて「あー!!」っていう声を出さなくては耐えられない。しかしなんて急展開なんだ。

16:30

母と夫息子が立ち会い交代。

「お子さん立ち会われますか」と最後の確認。バースプランに「あまりにも苦しむところを見せるのは抵抗があるので、麻酔が効いてきてから立ち会わせたい」と書いていた。もはや、そんな穏やかな状況ではないが「立ち会います」と伝え横にいてもらう。

16:45

次男、泣いている。

一瞬の痛みの凪のような時間があり息子たちに「大丈夫?」とか声をかけた気がする。トラウマにならなきゃいいなとは思いながら、多分これが母親として見せられる「頑張る姿」の最大限なんじゃないかと思う。頑張るから、見ててね

16:50

波がおさまるタイミングで先生や助産師さんが兄たちに話しかけてくれて、シリアスな雰囲気をなくしてくれている。自分の中に壮絶な痛みの世界があるのに、目の前で息子たちがどんな反応をしているのかも気になる世界線。

名前決めた?と聞かれて、息子たちが自分たちの考えた名前を答えたから、先生たちもその名前を呼びながら「○○くん、がんばれ!」と言って声かけしてくれている。最終決定を悩んでいたが、これはもうその名前にしなきゃだな。と思う。

17:00

ここまでくると恐怖にも近い痛みが何度も襲う。片脚を上げていきむ体勢を先生が作るのだが、足を上げる体勢になるのがつらい。更にそこからいきむのもつらい。夫の手を握っていきむが、こんなに強く掴んでいたら、夫の手がおかしくなるんじゃないかと思う。でもその手を離すことができなかった。

途中「髪の毛見えてきたよ、触ってみる?」と言われ自分の股のところにあるものを触る。痛みの中にいるので何がなんだかわからないが、思ったよりツルンツルンした感触だった。

おそらくこのくらいのタイミングで破水。

17:21

三男誕生

オギャアという泣き声と共に世界に三男が登場した瞬間。

「泣き声きこえる??」と息子たちを見ると号泣していた笑 あんまりにも泣いているから、私は涙なんて全然出なかったけれど、ものすごい達成感を感じた。完全にやり切ったという思いが溢れた。

すぐに赤ちゃんを胸の上にのせてくれる。まず最初に重いなって思い、命の重さを感じた。次にあったかいなって思い、これは命のあたたかさだと思った。

次男を抱いた時は新生児って軽いって思った記憶があったのだが、今回はずっしりとしたものを胸にのせていた。

17:30

出産後のさまざまな処置。

お股を縫われる感覚や、お腹の中から色々とかき出されるような感覚、どれもいててて…となる。産んだあともあちこち痛いんだよね苦笑

18:00

2時間ほどを目安に分娩室で過ごすそうで。助産師さんが「胎盤見ますか?」と聞いてくれて、息子たちに見せながら説明してくれた。この膜に包まれて赤ちゃんはお腹の中にいたんだよ、とかも教えてくれたが、私も初めて見た…

体重を測ったり、心音の確認したり、そういうことを息子たちと一緒にやってくれて、ありがたい。

その後もメンズ3名赤ちゃんの周りであーだこーだ。ほっぺ触ったり、おてて握ったり、かわいいかわいい言っている。わかる。

19:30

サラシみたいなやつで骨盤を締める処置をしてもらう。助産師さん二人がかりでぎゅっと締めてくれる。日赤の助産師さんたち、みなプロフェッショナル感があり、好きだ。

20:15

分娩室から病室へ移動。

ベッドから立ち上がる時、さすがにフラフラして出産って本当にすごい出来事だよな…と思う。今まで車椅子に乗った機会を思い出すと、多分人生で分娩室から移動するこのときだけだ。

面会時間が過ぎているので夫と息子たちとはここでバイバイ。

分娩室のスタッフルームにいた方も、病棟の方も、皆通りすぎる時に「おめでとうございます」と立ち上がって声をかけてくれる。むしろこちらが立ち上がって「ありがとうございます」と伝えたい。

20:30

ここから病室での夜がはじまるが、あまりにも長くなってしまうので、続きはまた明日。

「穏やかなお産にしたい」とバースプランに書いていたが、果たしてどうだっただろう。でも、なんていうかお腹の赤ちゃんのペースで二人三脚産んだぞ!っていう誇りみたいなものも確かにあって、家族一丸でこの大イベントを乗り越えた気持ちがある。次男が産まれた時は長男出産時にはなかった「産まれた瞬間からかわいい!」があった。三男の出産にはもちろん「産まれた瞬間からかわいい!」があったし、更に「産まれた瞬間から幸せ」まであったと思う。君が世界にやってきてくれたことで、家族みんなの未来まで幸せまで確約されたような幸福感をなんと表せばいいんだろう。

家族の形はたくさんあるけれど、最後のピースがぱちんってはまったみたいな気持ちだよ。産まれてきてくれてありがとう。

商店内のみなさんにはいつもいつも激励の言葉を寄せていただき感謝しかありません。そして、ここを読んで連絡をくれた友人知人、ここを読んではいないけれど心遣いを沢山くれた同僚の方々や家族、みんなみんな。そして誰より大変だったであろう夫、息子、私のトツキトオカを支えてくれたすべての方々にありがとう。

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