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    島縞

    島縞
    シマシマ

    しまい込んでたランドセル

    眠たくて眠たくて、もうそのまま眠ってしまいたかったけれど。
    今日は私の部屋にお泊りの娘から、何度も起き上がってと言われ、なんとか一緒に歯磨きを始められた。

    今日は朝から、人の多い場所で過ごして、お昼には給食を食べに学校に向かった。

    学校に着く頃には、トイレに行きたくて行きたくてたまらなくて。外側から回って教室に入るなり「トイレ行こう!」と小走りする。教室に先生がいなくてよかった。挨拶をさておいてトイレに走ることはできなかっただろうから。

    「もう、お母さんったらねえ」と廊下に誰もいないことを確認、ふたりして廊下を走った。
    たまらなく安心して教室に戻ろうとしたところで、誰かがこちらに向かってお盆を運んでくる。これは、もしや。娘は慌てて、誰もいない別の組の教室に身を隠す。私も娘に言われるまま。そっと覗き込めば、こちらを振り向き振り向き戻っていく女の子と2回ほど目があった。娘に申告すれば、「もう、お母さん何やってんの」と重ねて突っ込まれてしまった。

    教室で待っていると、先生が子どもたちふたりとお盆を持ってやって来た。ひとりはさっき運んでくれていた子だ。
    娘がお友だちと顔を合わせられるような、先生の企み。今日1番、緊張したんじゃないかな、娘も、お友だちも。もれなく私も。

    先生と3人になり、いただきますする。全部食べてしまえるかな。先生からの問いかけに答えられるかな。娘の一挙手一投足に神経を尖らせる。でも、それは杞憂だったみたい。やっぱり先生はスペシャリストだ。オドオドな母を尻目に、食べ終わると娘のやってきたドリルを確認しつつ、やりなおしをさせる。照れて小さな声の娘をものともせず、どしどしアタック。娘もまんざらでもなさそうで、途中から私も気を抜いてただ眺めていることにした。

    気を抜きすぎて、娘ができましたの合図の『ピコン!』を押した音に、本気で驚く。
    もうここはしたくない、しないでいいよ、って母には言ったところも、先生から「ここやってないじゃーん」と言われれば、素直にやりとげてしまった。

    これが親以外の大人の力。私はいよいよ、この力を崇められるようになってきたんだ。それって、望んで得られるものではない。本人が本当に必要としない限り。ようやく、そんな日が来たんだ。

    これで数年のこれまでが解決したわけではない。きっと1歩進んで3歩下がったり、5歩進んだと思ったら、20歩下がることもあるんだろう。2歩進んだと思ったら、スキップでずっと向こうにまで行ってることもあるかもしれない。
    そういうのを、一緒に喜びながら、一緒に休みながら、それぞれに順応していけるといい。

    先生も車まで一緒に歩いてくれた。来たときにはトイレ騒動で見逃していた、真っ白な雪みたいにフワフワの花がきれいよと教えてもらう。先生は、それを無造作に抜いて、庭に植えたらたくさん増えるよって渡してくれた。

    帰りの車の中、「今日、学校めっちゃ楽しかった」って言葉が飛び出した。君が想像する以上に、油断しすぎなくらいに、私はとっても喜んでしまったよ。

    夜、ずっと箱に入れてしまい込んでたランドセルをふたりで出して、肩ベルトを調整した。

     

    書き手

    ひらのあすみ

    ひらのあすみ

    長崎県五島市/44歳

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