アルキメデスは浴槽から溢れる水を見て「ユリイカ!」と叫んだ。私たちは日々見聞きする言葉に触れては「エフェメラ!」と叫ぶともなしに記録しようと思う。言葉は儚いものであるからこそ、今このときを確実に残してくれるから。
「本作のレビューエンバーゴが本日8月18日(火)18時をもって解禁となりましたので、お知らせいたします」
某映画配給会社からのメール
とある映画配給会社からメール。読んでみると、意味はわかる。意味はわかるが「レビューエンバーゴ」ってなに? 厳密に言えば「エンバーゴ」ってなに? なんだけど、調べてみると普通に出てくる。ことメディア関係においては「報道禁止」を意味するそうで、「エンバーゴ期間はメディアで書いちゃダメ」という注意なのだけど、もともとは「禁輸」を指すらしい。ビジネス用語っぽいし、知らなくてもいいかと思ったけど「一般教養かしら」と思って(だとしたら、書くのもちょっと恥ずかしいので)、一応アーにLINEしたらやっぱり知らなかった。ついでに馴染みの飲み屋の先輩に聞いたら、やはり知らなかった。
で、この文脈においてなにが「エンバーゴ」かというと、映画『オデュッセイア』情報。ライターの身分で試写会に行き、配給会社からメールが届いたというわけで。とはいえ、日本公開こそ9月だけど、海外では7月に、それも90か国くらいで公開されているのだから、エンバーゴもなにもない気がするのだけど......。
それはさておき、映画『オデュッセイア』のエンバーゴ解禁なので、いろいろ書ける。2週間前くらいに観たので、やや感動は薄れているけれど、エンバーゴ解禁します。
というわけで、下記はネタバレにも触れます。
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ひとまず基本的な話として、この映画『オデュッセイア』はクリストファー・ノーランの最新作。『インターステラー』(最高!)、『インセプション』(最高!)、『テネット』(意味わかんないけど最高!)などを手掛けてきた監督の最新作で、つまりは今年ベスト間違いなし(個人の意見です)の1作。
また、『オデュッセイア』というのは、ご存知ホメロス『イリアス』に続く物語で、つまりは西洋古典のなかの超一級古典が原作。有名な話だと、トロイの木馬のエピソードなんかが絡んでくる神話。
ここから、ネタバレにも触れますからね!
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というわけで、本来ネタバレもなにもないのだけど、原作どおりなのかどうかももはやネタバレになってしまう気がして。
で、その点について次から触れますよ!
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ひとまず、映画『オデュッセイア』はほぼ原作どおり。つまり、オデュッセウスがトロイ戦争でスパルタに勝利してから家に帰るまでの物語。スパルタから家までは船でまあまあかかる。しかも、帰路で神々に遭遇して大変な目に遭っちゃう。結局、家を出て戦争に勝つまでに10年、勝ってから家に帰り着くまでに10年もかかる。『オデュッセイア』はこの後半10年の話で、その冒険譚はもちろん、家に20年残された人のエピソードも描かれる。
オデュッセウスはトロイ戦争を指揮できるくらいには偉い人なので、「家」といってもただの「家」ではなく、まあ「王家」だ。だから、20年残されたパートナーには求婚者が群がっちゃってる。オデュッセイアは家に帰ってくるが、20年も経っているから、群がる求婚者からしたら「本当に本人?」ともなる。その辺の証明方法、もといエンバーゴ解禁方法もほぼ原作どおり。
というわけで、大概原作どおりなのだけど、映画を観るうえで原作を知っている必要は全くなくて、めちゃくちゃ説明してくれる。なんならトロイの木馬作戦すら丁寧に説明してくれる。さらに、これも原作どおりだけど、リアリティのラインを遵守するこれまでのノーラン映画からは想像しがたい、ひとつ目巨人といったいわゆるクリーチャーも登場する。きっちり説明、かつ、ド派手。というわけで、僕はこの映画をド・エンタメ映画として楽しんだ。
ただ。書きながらちょっと思ったのは、このド・エンタメ映画というのはハリウッド的かというとやっぱりちょっと違っていて、例えばスピルバーグ的な映画とは違う。つまりキッズに向けた映画ではない。実際、キッズはほとんど出てこない。少なくともキッズに感情移入する作りにはなっていない。
なんなんだろうな、やっぱりキューブリックとか、同郷イギリス出身というだけでリドリー・スコットだったりを思ったりしなくもないけれど、その辺は詳しい人におまかせします。
と、いろいろ書いてきたけれど、僕が去年取材して書いたこの記事が今読むととてもちょうどいい。面白いのは出てくれた人たちのおかげ、妙に間違っている(シャーリーズ・セロンが、キルケーを演じることになっているけれど、実際はカリュプソー)のは僕のミスです。
https://popeyemagazine.jp/post-266579/
あ、あと、ゼンデイヤが最高でした! 助演女優賞!!(189)
エフェメラ/「一日だけの、短命な」を意味するギリシャ語「ephemera」。転じて、チラシやポスターなど一時的な情報伝達のために作成される紙ものなどを指す。短命だからこそ、時代を映すとされ、収集の対象になっている。




