アルキメデスは浴槽から溢れる水を見て「ユリイカ!」と叫んだ。私たちは日々見聞きする言葉に触れては「エフェメラ!」と叫ぶともなしに記録しようと思う。言葉は儚いものであるからこそ、今このときを確実に残してくれるから。

 



「金沢の思い出A to Zやらへん?」迎亮太



 

金沢日記を途中でほっぽりだしていた。

金沢で泊まったホテルは「SOKI KANAZAWA」というところ。シンプルできれいでリーズナブル、そして大浴場があるのが嬉しいところ。旅先での朝は早い。朝からやってるコーヒーショップに行くのがいつものお決まりのようなもの。今回は「townsfolk coffee」へ。なんていうか、全部がちょうど良い。お店のロケーションやサイズ、混み具合まで全部。

ささっとモーニングを済ませて、「尾山神社」へお参り。静謐な空気が心地よい。

それから、「谷口吉郎・吉生記念金沢建築館」に寄って、古本屋「あうん堂」へ。
迎えてくれたのはやさしいお父さんとお母さん。あんなに心からの「いらっしゃい」を言われたのははじめてな気がする。あうん堂の本棚の前に立っていると不思議と落ち着く。あの本棚と本棚にはさまれた細い隙間がよいのか。すこし暗めの照明がよいのか。お店全体をまとっているこの空気感がそうさせるのか。じっくり見て、気になった本ピックし、喫茶コーナーで紫蘇ジュースを注文して休憩。あとから「あうん堂」のInstagramをみたら、「店のモットーは、ムリはしない・おごらない・いばらない、です。」と書いてあって、納得感がすごかった。

「あうん堂」のあとは「IACK」へ。ここ入っていいの?って思うような細いところを入った先にお店があった。大きな看板もなく...というかちいさな看板もない。よく見ると雨風にさらされてもう飛んでいきそうなくらいにへなへなになったショップカードが、申し訳なさそうに貼り付けられていた。とはいえ、入り口がどこかよくわからないお店は、それだけでなんか楽しい気分になるからよい。隠れ家のような写真とアートブックのお店。中二階のようなスペースに、ざざっと洋書のセール本が積まれていて、よい雰囲気だった。


この時点で時間は14時過ぎ。さて、夜ごはんまではまだあるけれど、旅行なんだからもう飲んだっていいよね?ということで、向かったのは「伊東商店」。お店の前にはちいさな川が流れていて、なんとも素敵な場所。伊東商店は、ナチュラルワインのお店。出てくるワインが美味しいのはもちろんのこと、店主の伊東さん(伊東商店だから、伊東さんでいいよね?)の接客もすこぶる心地よく、ついついグラスをかたむける頻度がおおくなってしまう。お店に流れている音楽がすごくわたし好みだったのもあいまって、ひさびさに良い酔い方をした気がするな。洋楽だけじゃなくって、折坂くんとか中村佳穂とか、とにかく好きな曲が流れ続けてた。トイレに向かう壁にはたくさんの映画のポスターも。濱口監督の『悪は存在しない』のポスターもあったから、きっと映画の好みも近そうな気がする!こういう時間がもっとたくさん増やせたらいいのに。

「伊東商店」を出たあとは、すぐ近くにある「ひらみぱん」へ。パンの種類は残り少なかったけど、何個か買って、歩きながら食べた。ああでもまだこれじゃあ終われない。まだまだお寿司が食べ足りない!最後にすべりこみで、駅前の回転ずしへ。やっぱり金沢のお寿司はおいしいね、と言いながらたっぷり食べて、帰りの新幹線へ。新幹線のなかで迎が「金沢の思い出A to Zやらへん?」と言い出した。A、B、Cと順番に候補のキーワードをあげていくうちにわたしは寝てしまって、あっという間に東京駅。そのうち迎がこの日記に「金沢の思い出A to Z」を書くかな。それを読むのが楽しみ。

(200)


 

エフェメラ/「一日だけの、短命な」を意味するギリシャ語「ephemera」。転じて、チラシやポスターなど一時的な情報伝達のために作成される紙ものなどを指す。短命だからこそ、時代を映すとされ、収集の対象になっている。